(5)

「た……助けてぇ〜ッ‼」

 翌日、スーパーに買い出しに行った帰りに……えっ? 何?

 暑いのは判るけど……その……。

 うん、絶対にこれは、オタク用語で言う「ラッキー・スケベ」じゃない。

 単なる異常事態だ。

 単なる異常事態ってのも変な言い方だけど、東京が焼け野原になるとか、いつの間にか、この世界に恐竜が出現して、平然と暮してる、ってのに比べれば……って、あの悲鳴をあげながら走ってる裸の女の子……どっかで見覚えが……。

「わ……わかな……ちゃん?」

「え……あああああッ、優希ちゃん、助けて……」

 中学の頃の同級生だった……。

 たしか、高校は私立の……えっと……偏差値はそこそこだけど、地元の中小にしては大きめの企業の社長さんとか……議員さんとかの子供とか……噂半分だと思うけど「成績や進学先を金で買える」って悪い話をたまに聞くような……。

「な……なに、やってんだよ……」

「お……お……お……おやにおやにおやにににに……」

「落ち着け〜ッ‼」

「待て〜ッ‼ わかな〜ッ‼」

 そこに、あたし達と大して変んない年頃の男の子の……あ、こっちは、普通に服を着てる。

「やらせろ〜ッ‼ お前の為なんだ〜ッ‼ 今すぐ、やらせろ〜ッ‼」

 うわああああッ‼ 何だよ、こいつッ?

 ぐしゃっ‼

 次の瞬間……あれ……何……。

 変態が、突然、現われた恐竜に食い殺された。

 豹柄に、頭の天辺てっぺんから尻尾の先まで、赤いタテガミ……。

 妙に怖い顔……。

 でも……。

「ここは、ウチが何とかするけん、早よ逃げんね」

「は……はい……」

 おかしい。

 まただ……。

 この恐竜さん……

「あと……その子……」

 その恐竜は……あおいちゃんの方を睨む。

 そして……。

 吠えた……。

「え……」

「あ……」

 あおいちゃんの体は……。

 うそ……これも……どこで見たのか思い出せないのに、見覚えが有る。

 あおいちゃんの体は……河童と言うか……亀人間と言うか……そうゆ〜感じの爬虫類人間に変っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る