(7)

「なあ……ガジくん……ウチって乱暴者やろか? 恐くて凶暴な嫌われ者やろか?」

 やめろ……恐竜同士の意味不明なデートに突き合されるあたしの身にもなってみろ。

「そんな事ないのだ。ガジくんにとって世界一優しい恐竜ひとは、お姉ちゃんなのだ」

 だから、やめろ。

「う……そう言ってゆ〜てくれんのは、ガジくんだけたい」

「そんな事ないのだ。みんな、スーお姉ちゃんが優しい恐竜ひとだと判っているのだ」

 夕暮れ時の草原で仲良く座ってる恐竜2匹。

 なごやかで微笑ましいその光景は……あたしの正気をガリガリと削っていった。

 たのむ……体……返して……。もう……こんな狂気から、あたしを解放して……。

「ガジくん……」

 スーちゃんは、そう言って、ガジくんとか言う恐竜と化した私に……首筋を差し出し……。

 やめろ。

 やめろ……。

 たすけて……。

 あたしは、まだ、人間のままでいたいんだ。

 あたしの体を使って人間には理解不能なイチャイチャはやめろ。

 がじっ♥

 がじっ♥

 がじっ♥

 やめろ〜ッ‼

「にゃおっ♥」

 世にも凶暴そうな顔の恐竜が、もう1匹の恐竜にガジガジされながら、頭をナデナデされた子猫みたいな声を出してる。

 子供のヌイグルミ遊びを更に数万倍にスケールアップしたような光景が繰り広げられる中……あたしの心は……ゆっくりと……けど……

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