ぼっちとぼっちがコンビ組んだら両方そなわりさいきょうにみえる
RSIM
第1話 冒頭を台無しにするインコ
鬱蒼と茂る森の中で獰猛な狼達が狡猾に獲物の周りを囲む。狼によって囲まれた中心では一人の男と、他の狼を凌駕する巨大な狼が対峙していた。
今にも獲物の喉笛を噛み千切らんと怒りに赤く光る双眼。
男は鉄棒を上段に構え、じりじりと距離を詰めていく。
間合いを嫌ったのか狼から先に仕掛けた。2m程離れた距離を一瞬で詰め男へと迫る。だが男も反応していた。見切ったとでも言えばいいのか。
男は上段から渾身の一撃を獣の頭蓋へ叩き込み、大地へと平伏させる。
男を囲う幾つもの視線は、彼らの王が一撃で絶命した事を悟った。
頭が高いと言わんばかりの振舞に獣達は仇討ちも忘れ、魅入られた。
そして群れる全ての狼が男への臣従を選んだ。だが男から向けられる視線は混じりのない敵意と殺意。
狼達は失意のうちに踵を返す。気配が去り、男は事切れた獲物の状態を確認する。
男が蛮族の様な戦い方をしていたのは、獲物の毛皮に傷をつけたくなかった為だ。
そして獣はハンターという肩書を持つ男によって生命を糧にされるのだ。
どちらが勝っても結果は同じ。人の理が及ばない場所では弱肉強食こそが絶対公平のルールなのだ。
それに比べ……嗚呼、全くもって人の世は解しがたい。 人の世のなんと醜いことよ……人の世のなんとおろ「うるせぇ!!」
「ピィ!?」
俺は頭の上に止まってペラペラうるさいインコを鷲掴みにする。こいつ喋るんだぜ?どんな設定だよ。
「痛いじゃない! あと設定言うなし!!」
「その喋り方すげーイラッとくるんだよ! どこで覚えてきたんだそれ」
「3件隣のお爺ちゃん。よく庭先で池のサカナ見つめながらブツブツ言ってるし。アンナさんに聞いたら『転生魔法の邪魔しちゃダメよ?』だって。転生魔法って何?」
「アンナ最悪だな。お前も絶対爺さんの前で喋るなよ? びっくりしてそのまま転生しちまうわ」
「知らない人の前じゃ喋らないしー。それより監視がんばった! ほめてほめて!」
「『あたし木の上で監視してるし』つって速攻寝てた癖によく言うわ」
「片目開けてたし。それより早く帰ろ? ごはん食べたいし」
「ああ、行くぞ」
「頭の上に可憐な鳥を乗せた男は獲物を担ぎ歩き出す。上々の戦果だった。
今日の夕飯はきっとイチゴとクルミの、ちょ! 痛い痛いやめて!! 羽を引っ張らないで!!」
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