逆光の樹影、ガラスのリノウ

長月瓦礫

人形


リノウドールはくるくる踊る。

太陽を背にきらり反射する。


綺麗に整えられた芝生。規則正しく並ぶ樹木。

奇天烈な三拍子。木陰の下で人形は踊る。


リノウドールは最先端を踊る。

科学のその先の夢幻の魔法で踊り続ける。


誰にも成しえなかった無限の可能性。

それがリノウ式魔導工学。


サイケデリックな両目を回してくるくる踊る。


魔法の両目はドールの命。

魔法がなければ明日は見えない。


魔力がなければ人を狩れ。心を捧げよ。

さすればリノウドールはあなたの命令に従うだろう。


がしゃん。その場に倒れ込んだ。

熱に耐えきれず、次々と崩れていく。


透明な体にひびが入り、ばらばらと壊れた。


次の瞬間、リノウドールは再生された。

一片の曇りも一寸の狂いもなく、すべてが復活した。


四肢が戻ると踊り始める。

両目が戻ると歌い始める。


魔法は無限の可能性。

科学のその先にある夢幻の可能性。


真夏の理不尽に耐えきれず、また壊れる。

再生して踊る。くるくる。くるくる。


ここには誰もいない。リノウドールは踊り続ける。

魔法の夢幻性を歌い、科学を否定し続ける。


たとえ、そこに聞く人が誰もいなくても。

世界がある限り、リノウドールは踊り続ける。


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