寂しい

豆しばむつ子

1話完結

寂しい。

私はとっても寂しくなったので風に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

風は私を攫うようにごうと強く吹いただけで何も答えてはくれませんでした。


次に水に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

水は指の間をさらさらと冷たく流れるだけで何も答えてはくれませんでした。


今度は猫に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

猫は大きなあくびをして丸くなったと思ったらそのまま眠ってしまいました。


犬に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

犬は尻尾を振るだけで何も答えてはくれませんでした。


小鳥に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

小鳥は首を傾げてちよと高く鳴いたきり何も答えてはくれませんでした。


花に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

花はぺこっとお辞儀をしたきり何も答えてはくれませんでした。


山に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

山は頑なに静かでした。


海に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

海はその波で私の声をかき消してしまいました。


もうすっかり夕焼けです。

私は夕焼けに聞きました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

夕焼けは涙と一緒に落ちていきました。


夜。

私は夜に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

夜はその暗闇で私を飲み込もうとしたので慌てて逃げました。


月に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

三日月はにやりと笑ったきり何も答えてはくれませんでした。


星に聞いてみました。

「どうして私はこんなにさびしいのですか。」

星は隣同士でくすくすと笑って何も答えてはくれませんでした。


寂しい。

私は答えを求めて歩き続けました。

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寂しい 豆しばむつ子 @mame_mutsuko

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