第7話

 デイブの説明が終わるとしばらく誰も口を開かなかった。しばらくの沈黙の後ギルマスのコーエンが言った。


「つまりお前さん達はこの星にある別の大陸で最高ランクの冒険者だった。そして自分達よりランクの高い獣人や魔獣を倒しながらその大陸にある誰も行ったことがないという山に登り、そこの火口にある渦巻きに飛び込んだらこっちの大陸に飛ばされてやってきた。そう言うことだな?」


「その通り」

 

 確認する様に行ったコーエンの言葉に答えるデイブ。


「2人の実力は私たちボルケーノが保証する。残念ながら私たち全員が束になっても敵わない程2人は強いわよ」


「マリアンヌの言う通りだ。このデイブとダンの強さは桁が違う。おそらくだがこの国の冒険者の中でも彼らより強い奴らはいないだろう」


 マリアンヌの言葉に続けてジャンが言った。そしてそのジャンの言葉に他のメンバーも全員大きく頷いている。


 それを見たギルマスのコーエン、ローブを着ている2人に顔を向けて。


「それでこの大陸でも冒険者をやりたいってことか」


「その通り。彼らに聞いた話だと獣人領の奥には魔人ってのがいるらしい。俺達は強い敵を相手にするためにやって来た。獣人領に乗り込んでその魔人ってのを相手に鍛錬したいんだよ」


「何だって?」


 デイブの言葉に再びびっくりするコーエン。


「それとも獣人領には行っちゃあいけないとか、相手にしたらいけないとか決まりがあるのか?」


 続けてデイブが聞く。


「いや、そんな決まりは無いはずだ。はずだと言うのは今までそんな事を言う奴が1人もいなかったからだが」


 そう言ってうーんと唸り声を上げるコーエン。そして2人を見て


「まずは2人を冒険者登録しよう。それでクラスだが聞いていると思うがここでは冒険者のクラスはFから始まって今のところ最高がAだ。そしてここにいるボルケーノはメンバーとしてもパーティとしてもどちらもAクラスだ。Aクラスは王都以外の街では1つの街で1パーティいれば良い方だ。中にはAクラスがいない街もある」


「Aクラスは1都市に1パーティって決まっているのかい?」


 コーエンの説明の途中でデイブが聞いた。それに首を振ると、


「決まってはいない。ただそこまでの奴らがいないだけだ」


 なるほどと言うデイブ、話の途中で聞いて悪かった、続けてくれと言う。コーエンはわかったと言って、


「それで聞いている話だとお前さん達2人はボルケーノよりずっと強いってことだ。そうだな?マリアンヌ?」


「その通り、あそこまで力の差があると悔しさもないくらいよ」


 マリアンヌが言うとそうだよな、レベルが違いすぎると他のメンバーも言った。その言葉に再び唸り声を出すギルマスのコーエン。


「本来なら最低でもAクラスを与えなきゃならないんだろうがギルドの規則で冒険者になった奴がいきなりAにってのはできないんだよ」


「別にAとかBとかクラスにはこだわってない。この大陸で自由に行動ができるなら何でもいいさ」


 デイブが言うとずっと黙っていたダンが言った。


「俺達2人は前の大陸でもクラスには全くこだわっていない。ただ強い敵と対戦をして自分の能力を高めることだけをやってきた。この大陸でもクラスに拘りは無い。デイブも言ったが行動に制限のないクラスならそれで十分だよ」


 話をしているダンを見ているコーエン。コーエン自身も以前はAクラスの冒険者だった。その元冒険者の目から見ても目の前にいる2人は半端ない強さだというのが伝わってくる。2人ともじっと座っていてもオーラが出ている。


 特に今話をしているダン、こいつの強者のオーラは半端ないなと思っていた。コーエンはしばらく考えててから、


「今からここの鍛錬場で2人で模擬戦をしてくれるか。それで判断する」


 一行はギルドの2階から下に降りるとそのままギルドに併設されている鍛錬場にに向かっていく。この辺りの構造はどこも同じだなとダンとデイブは思っていた。鍛錬場もヴェルスの街にあったものと大差ない。


 鍛錬場には数名の冒険者がいたがギルマスを先頭に見慣れないローブを着た2人組とその後ろからボルケーノのパーティが入ってきたのを見て何事だという顔をする。


 ギルマスは鍛錬場に入ると2人を見て


「ここで模擬戦をしてくれ、そして模擬戦が終わったらあそこの人形に魔法を撃ってくれるか?魔法の種類は問わない」


「わかった」


 デイブが言うとダンはその場で指や腕から装備を外していく。


「装備を外してるのか?」


 ダンの仕草を見てコーエンが聞いてきた。


「ああ、お互いに装備をしていると模擬戦にならないんだよ。俺は装備をつけたままでダンは全ての装備を外す。それでやっと模擬戦が成立するくらいにダンは強い」


 デイブが答える。その間に全ての装備を外したダン。お互いに模擬刀を取り出して両手に持つ。


「二刀流は初めてだ」


 2人の格好を見てブルーが言う。マリアンヌは口には出さずに頷きながら2人をじっと見ていた。ラエの要塞での模擬戦では2人とも片手剣1本だけ持っていた。それであの強さだ。お互いに2本持ったらどうなるのか。そして2人は見た瞬間に相手の強さがわかっていたのだ。私たち相手なら片手剣1本で十分だと。


 ギルドマスター、職員、ボルケーノのメンバー、そして鍛錬場に集まってきた冒険者達の見ている前でダンとデイブの模擬戦が始まった。


 始まってすぐに何とも言えない声が鍛錬場に響く。


「何だあれ?」


「全く見えない」


 他の冒険者達が言い合っている中ボルケーノのメンバーも唖然として模擬戦を見ていた。誰かが言った通りダンとデイブの剣の動きがほとんど見えない。模擬刀同士がぶつかり合う音だけが鍛錬場に響いている。


「俺達との模擬戦は完全に流していたってことか」


「今のだって2人の本気じゃないだろう。剣の動きは見えないが足の動きを見てみろ。2人とも力が入ってない」


 ブルーの言葉にジャンが続けて言った。確かにその通りだ。あの2人はこれでも本気モードじゃない、力の8割?いやもっと少ないだろう。完全に流しているとマリアンヌも模擬戦を見ながら思っていた。


「OKだ」


 ギルマスのコーエンの声が飛ぶと2人離れる、2人とも息一つ乱れていない。

 そうして2人が左手を伸ばすと同時に魔法が発射されて鍛錬場の奥にある人形が精霊魔法を受けて激しく揺れる。


「魔法の威力も半端ないぜ」


 クラウドは2人の魔法を見て


「デイブの方が確かに威力は優れているがダンも相当だ。いずれにしても俺よりも威力があるのは間違いない」


「他の大陸でNO.1を張っていたというのは本当でしょう。桁違いの強さね。おそらく王都にいるAクラスよりもずっと上よ」


 マリアンヌの言葉に頷くメンバー。

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