第46話エピローグ
エピローグ
その後、魔王軍幹部の脅威がさったウーノの街で、僕たちは領主様より勲章を賜り、二つ上であるAランク冒険者となった。
まだまだ姉ちゃんと同じSランクには程遠いが、まともに魔物と戦わせてすらもらえなかったあの頃に比べたら大きな進歩である。
家に届けられた報酬は今まで見たこともないほどの大量の金貨で、借金を返してもあまりあるほどで……フレンはそのお金を元手に新しい事業を始め、マオは少しだけいい服を着るようになり、今日も喧嘩をしながらフレンの仕事を手伝っている。
……そして、僕はというと。
「ねえねえユウ君‼︎ お魚、お魚が跳ねたよ‼︎ 釣りしていこうよ‼︎」
「はいはい……それは依頼を達成したらね。と言うか姉ちゃん……病み上がりなんだから、あんまりはしゃいでると傷口開くよ?」
「大丈夫だよー、これぐらいー‼︎」
変わらず、姉ちゃんと二人でウーノの街で冒険者として活動をしていた。
そう、姉ちゃんは生きていたのだ。
「はぁ……しかし、まさか姉ちゃんが死んでも生き返るなんてねぇ。遺体を運び出している最中に「お腹すいたぁ」って起き上がった時は本当に心臓が飛び出るかと思ったよ……というか、勇者の剣に蘇生魔法が仕込まれているんだったら……最初から教えておいてよ」
「いやぁ〜、使うことなんてないだろうななんて思ってたから。ついつい忘れちゃって」
てへへ、なんて言いながら罰が悪そうに笑う姉ちゃん。
肩の荷が降りたような、砕けた微笑みに僕は「まったく」と呆れてみるも、幸せそうなその笑顔に釣られて笑ってしまう。
結局……勇者の剣に収められていた蘇生魔法により姉ちゃんは何事もなかったかのように復活し、僕たちはいつもの日常を取り戻した。
姉ちゃんは今回の件で少し反省をしたらしく、みんなの傷が癒えた頃、事情をみんなに説明をした。
僕の体のこと、ブレイブハザードのこと、そして、僕を守るために真実を隠していたことをきちんと謝った上で、包み隠さずみんなに伝えた。
初めこそ「うえー、何て趣味悪いことを……人間って怖っ」と、ルシドに対して嫌悪感や文句を垂れていたマオではあったが。
現状、僕の体から魔物達を引き剥がす術がないことを教えると。
「ま、なら仕方ないの……なに、お主も望まずその体になったならお互い様よ。それに、お主が妾の友として力を振るってくれるならば、奴らも本望じゃろうて」
と、あっさり承諾をしてくれ、それからは僕たちの関係は元通り。
マオと姉ちゃんは、週末には二人で買い物に出かける友人になり、僕がブレイブハザードを引き起こした張本人であると知っても、フレンは変わらず僕の悪友のままである。
「ふふっ……じゃあ、さっさと依頼を達成して二人でお魚釣りだね‼︎ そしたら、仕事が早く終わるよう、ユウ君もパワーアップしておかないと‼︎」
全てが丸く収まった、と言うわけではないが……背負い込んでいた重荷が一つ減ったのだろう、最近の姉ちゃんは少し過保護さが薄らいだような気がする。
「僕ももうAランク冒険者だし、どうせならSランク冒険者ぐらい強くしてくれてもいいんだよ? 姉ちゃん」
「もー、調子に乗らないの‼︎」
僕の冗談に姉ちゃんは苦笑を漏らすと、馬車の中で勇者の剣と僕にかけた封印をネプネプと調整し始める。
僕の強化に対して反対をしなくなってきたが……これはもしかすると、そろそろ僕を一人前と認めて来てくれたと言う事なのだろうか?
だとしたら……今回の強化は期待が持てるかもしれない。
これはいよいよ……魔王討伐の日も近づいて来たのではないだろうか……。
「解放完了‼︎ 見てよユウ君、今回の依頼はダンジョン探索だから、勇者の剣がかっこよく光るようにしてみたよ‼︎ これで暗いダンジョンも安心だね‼︎」
「…………………強化は?」
……前言撤回。
僕の魔王討伐の旅は……まだまだ先は長そうだ。
「もーどうにでもなれ」とでも言っているかのように煌々と輝く勇者の剣を眺めながら、僕はがっくりと肩を落としたのであった。
FIN
賢者の姉ちゃんが過保護な上にポンコツすぎて、魔王討伐が進まない 長見雄一 @nagamiyuuichi
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