第6話 Side クレナ episode.3

 それからというもの、クロウと父さんと手分けをしてセレンを探した。


玄関に靴が残っていて、鍵も閉まっている。


外に出た形跡はないのに、家中どこを探しても

妹の姿はなかった。


というよりも


そもそも妹がいたかすら怪しい


とすら感じる状況だったのだ。


 というのも、2階にある妹の自室に来たは良いが

そこに妹の使っていた机なども設置はされている


けれども


『写真』がないのだ。

いや写真自体は綺麗に写真立てを並べてられているのだが


『セレン』だけがそこにいないのだ。


家族で撮った写真には父と母、私


そして私の横の不自然に空いた空間


そこに手をかけようとする父の姿が収められていた。


妹の存在事消えてしまったかのような

そんな気がした。


「これは……」

写真を手に取るクロウも

その違和感に気付いた様子だった。


眉を下げ、困惑した表情でこちらを一瞥してきた。

……そういえば、昔私が声を掛けた時もこんな表情だったような気がする。


父さんはというと

写真を握りしめて凝視したまま動かなくなっている。


「……家にいない、となると可能性はアイツのとこしかないんじゃないのか?」


「靴も履かずに、か?」


クロウが提案してくれたそれは1番確実な案だったのは間違いない。

けれども、どうしても説明つかないことが残っているのも現状だ。


「あの子の靴は残っているのに、外に出……」


キィッ……パタン


言葉を紡ごうとして思考が停止した。


私たちは今、2階にいる。


そして、先程確認した際に玄関の鍵は閉まっていたはずだ。


誰かがノックもなしに家に入ってきたのか


誰かが鍵を開けて出ていったのか


前者であればただ非常識な人間だと、批難すれば良いのだが

それが後者であるのならば、説明つかない。


私は急いで玄関に向かった。


「クレナ!ちょっ……」


クロウが静止する声が聞こえたが

私はどうしても確認したいことがあった。


「セレン!!」


名を呼んでも、返事などない。


既に扉は閉まった後で、きっとこの声が外に聞こえることもないのだろう。


そして、そこに

セレンの靴はもうなかったのだ。


セレンが自らの足で外へ出た。

誰にも、行き先を告げずにひっそりと。


どこかに隠れていたのだろうか。


家中を3人で探したのに見つからなかった。


物音ひとつしなかった家の中で

どこにいたと言うのだろうか。


「クレナ!……セレンちゃんの靴、なくなってる……」


言葉を紡がない私を心配してかクロウがこちらを覗き込んで


その表情がまるで、雨の降り頻る道端に捨てられた子犬のようで


張り詰めていた糸がふっと緩んだ。


「クロウ、セレンを探しに行こう」


そう声を掛けて、私たちは家を出たんだ。


知らなければよかったかもしれない真実を知る為に。

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