笑顔かましてよかですか?

羨増 健介

受験中に出したら学生生活オワルナリ

 チッ……チッ……チッ。


 無慈悲に響き渡る体内時計の音を聴きながら、僕はセンター試験の最難関であると自負している国語にぶち当たっていた。


(なんだよ。スピンアトップ……スピンアトップ……スピンスピンスピン)


 スピンがゲシュタルト崩壊を起こしそうな勢いで螺旋状に旋回し、宙を舞って脳内へと直接注入されていく。


 わからん。わかるはずがない。何故にセンターの問題はこうもピンポイントに僕の腹を小突いてくる小説ばかり出してくるのだ。


 許せない!

 カリ……カリカリカリ……カリカリカリカリ。


 頭が混乱し更に増してこんがらがって行く。小説の点数は半数を稼げばなんとかなりそうだ。しかし、ここにいる面子はきっと数多もの修羅場、もとい模試を垣間見て潜り抜けたに違いない。


 笑い忍び、堪え耐え、真摯に問題と向き合ってきたに違いない。

 だが……今回のセンターはどうだ? 模試では何とかなった古典も、ここでつまづいてまごつけば全てが水泡と化してしまう。


 折角センター試験へトライ&エラーを繰り返しているのだから、今回こそは早慶レベルの点数にまで到達してやる!


 残り時間が一桁台になるまで、僕は我心の緩々さに囚われて動けないでいた。全て全ての問題欄に穴があり、これでは自己採点でいい数字を叩き出すことが出来ない。


 そんな事に雑念を働かせていた刹那……。

 僕の腹部に嫌な電流が疾駆した。


(んぐうううううううう!)


 突然の腹痛に腹を摩りながら事が収まるのを待とうとするも、腹痛は利口では無かった。


(アウチ!)


「試験官殿……! トイレ。行っていいですか?」

「どうぞ」


 この一言によって、僕のセンター試験は幕を閉じた。

 通算五回目である。


おしり

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