しゃんとした背筋が好きだった

第1話

2011年10月

「起きなよ」不機嫌な母の声がする。わかってる。

人生で、最も幸せな事象トップ5のどこかに入るのではないだろうか。

「起こしてくれる人がいること」


それでも、と思う。それでも、と思ってしまう。

もう少し優しく起こせないかな。

学校が嫌い。理由は、なんか馴染めないから。

大好きな友達も、全く関わりないのに尊敬してくれる後輩も、素敵な先生もたくさんいる。

そして、私はいわゆる、優等生である。

けど、嫌だ。体が重い。


「澪(みお)さん、遅刻ギリギリでしょ、いっつも」

「うん、学校、嫌いで」

「それじゃ通用しない、とか言われるやつです」

「うん、けど、そんな通用、私いらない」

いらないって、と言いながら、さらりと笑う。さらりと笑う人だった。


「お父さんとお母さん、びっくりしますよ。両親の言うことなんでも聞いて、反抗することも全くなく、勉強に部活に課外活動に秀でて、先生にも信頼されている、良い子な長女が私と付き合ってるなんて」

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