30分小説 君とみた星空は
「みて星だよ。」
双葉が僕に向かって話しかけてくる。
「綺麗だな。」
空にはたくさんの星が主張し目立とうとするようにキラキラと輝いていた。
「こんなにたくさんのお星さまがみれるなんて幸せだと思わない?二場。」
「…。」
その言葉に僕は答えを返せないでいた。
「二場?」
「あっ あぁーたくさんの星が見えるな。」
「うん。」
少しの間二人の間に沈黙が訪れる。
「なんだか寒くなってきた。」
「任せろ 暖めてやる。」
僕は着ていた上着を彼女に被せる。
「まだ寒いよ。」
「……。」
「二場抱き締めて。」
「わかった。」
僕は双葉の体を抱き締める。
「もっと強く まだ寒いよ。」
「わかった。」
さらに強く抱き締める。
僕の体には彼女の温もりと冷たさが同時に伝わってくる。
「二場苦しいよ。」
「あっとごめん。」
「でもあったかい。」
僕たちは抱き合ったままでいる。
「二場。」
双葉は少し恥ずかしそうに告げる。
「キス…して。」
「…わかった。」
僕たちはそこで初めてのキスをした。
初めてのキスは涙の味がした。
「二場。」
「なんだ?」
「大好きだよ。」
「あぁー僕もずっと双葉のこと好きだった。」
いつも近くにいてくれていつも支えてくれた。僕に少しでも勇気があればこの思いを この想いをもっと早く伝えれたはずなのに。
「なんだ。二場も好きだったんだ。よかった。」
双葉は安心しきったような笑みを浮かべる。
「私達 最初は相性最悪だったよね。」
「そうだったっけ?」
「忘れたの?」
別に忘れた訳じゃない。
僕たちは出会った頃は毎日のように言い合いしてた。
「出会って開口一番なんて言ったと思う?」
「あんたと同じペアなんて最悪 だろ?」
「覚えてるじゃん。」
「忘れたことないよ。」
そこから昔話をし始めた。
あの店のこと。あの日のこと。色々と話した気がする。
「おもいだしたらキリがないね。」
「いいじゃん。全部語るのも。」
「それは無理だよ。」
「……そうか。」
また少しの沈黙。
「二場?」
「なんだ?」
「もう一回好きだよって言って。」
「双葉……。」
僕たちはわかっていた。
だから双葉は求めたんだと思う。
「双葉。」
「なに?」
「好きだ 愛してる。」
「私も。」
そういえば彼女は笑顔がとても素敵だった。
「二場?」
「なんだ?」
「どこ?」
「ここにいるぞ。」
手を掴む。
「そこにいた。じゃあ 二場 最後にお休みって言って。」
「言わなきゃダメか?」
「お願い。」
「……わかった。」
彼女の最後の願い。
「お休み 双葉。」
最後まで彼女は笑顔だった。
「うっ……!」
僕は双葉の前で涙を流している。
周りには多くの害魔の亡骸がところ狭しと並んでいる。
「双葉。」
ヘリの音が聞こえてきた。
この日 人類vs害魔の戦いに終止符が撃たれた。
人類は害魔の脅威から勝つことが出来た。
しかし人類側にも多くの被害が出たことを忘れてはいけない。
あれから四年がたった。
まだ爪痕は残りつつも人類は徐々に元の暮らしを取り戻しつつあった。
「双葉 会いに来たよ。」
今日 おれは双葉の墓の前に来ていた。
「聞いてくれ 弾一が結婚するんだってさ。やっと春が来たって浮かれてそのままだぜ。しかも相手は驚くことに花さんだってさ。」
おれは報告とか最近起きたことを話す。
「双葉 また来るよ。今度はもっと報告できることあればいいな。」
立ち上がって後ろを向く。
二場 またね。 今度は二場の番だね。
「えっ?」
おれは慌てて後ろを振り向く。
しかし後ろには誰もいなかった。
「双葉の声がしてビックリしたよ。わかった 今度はおれの番だな。」
今日はあの日のようにたくさんの星が主張し目立とうとするようにキラキラと輝いていた。
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