抱き合って海へ――流れるままに甘々なキスを

 保冷バッグからスイカを取り出す真帆。

 透明な容器の中に一口サイズのスイカがあった。


 使い捨てのフォークで刺し、それを俺の口元へ運んできた。


「はい、あ~ん♪」


 はじめての“あ~ん”に俺は戸惑う。

 けど、思い切って食べてみた。


 ……はぐっ。


 スイカのシャクシャクした食感、

 瑞々みずみずしい味わい、

 なによりも、真帆から食べさせてもらえるという幸福感。



 スイカがあまりにも美味すぎた。



「君、可愛い。そんなに急がなくても、まだあるから」



 また食べさせてもらった。

 でも、食べさせてもらってばかりも悪い。今度は俺が食べさせる番だ。


 フォークを手に取り、俺は真帆の口元へ運ぶ。


「え、いいの? じゃあ、いただくね」


 口を開け、スイカをかじる真帆。

 味わって食べて幸せそうな顔をした。



「おいしい~! え、なにこれ。こんなにスイカって美味しかったっけ!?」



 びっくりする真帆。まだスイカが欲しそうにしていたので、俺は続けて食べさせていく。


 シャクシャクとスイカを食べる音が心地よい。



「う~ん、満足した」



 俺もスイカがこんなに美味しいとは思わなかった。



「あ、そうだ。ビーチボールで遊ばない?」



 真帆は、ビーチボールを取り出す。

 そうだな、少し遊ぼう。


 少し歩き、真帆と距離を取った。


 ポンッとボールが飛んでくる。


 俺はそれを腕で弾き返す。



「おー、うまいうまい! じゃあ、返すね!」



 と、真帆はボールを打ち上げようとするが、ボールが胸に直撃。衝撃でぼよんぼよんと揺れた。


 その場に倒れる真帆。

 だ、大丈夫かな。


 近くまで寄って確認すると、真帆は無事だった。



「失敗しちゃった。君のせいなんだからね」



 そう言って真帆は腕を伸ばして、俺を抱き寄せる。耳元でこう言ったんだ。



「君のこと好きすぎて、ぼうっとしちゃった」



 ……っ。



「ねえ、このまま抱き合いながら泳ごっか」



 抱き合いながら泳ぐ?

 そんなことが可能なのかな。


 俺は手を握られ、引っ張られてた。

 海へ入ると、改めて真帆は抱きついてきた。


 俺の背中に腕を回し、ぎゅぅぅと抱きついてきたんだ。


 女の子の柔らかい感触が俺を包む。



「海水が気持ちい。こうして抱き合うのも気持ちい。君の胸、広くて頼もしいし、このままビーチボードみたいにしてていい?」



 もちろんだ。

 ビーチボードでも、浮き輪にでもなりましょう。



 ギャルと抱き合ったまま、海を彷徨う。



「波の音が静か。……ねえ、そろそろキスしてくれる? ほら、ここなら絶対に見られないじゃん?」



 結構流されてきた。

 周囲は海だけ。


 ここなら心置きなくイチャイチャできる。


 でも、それでも俺は緊張が勝っていた。


 耳まで赤くしていると、真帆が我慢できなかったらしく唇を重ね合わせてきた。



「……これがあたしの気持ち。今度は、君からしてくれる?」



 もちろんと、うなずいて今度は俺から真帆にキスした。

 それから、ずっと甘々な一時を過ごした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る