17.その名前

「晴美に会うのも久々だね」

言うと彼女は寂しげに笑う。

「その名前で呼んでくれるの、もう和葉だけだよ。皆『宮脇の奥さん』か『晴人君のママ』だから」

名前さえなくした、愛する人。

どうすればよかった。あの時、攫って逃げればよかったのか。噛んだ唇をほどき、珈琲を一口啜る。

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