第3話「勉強会」1/2
ついてない。
小倉さんからのラインを見てため息をこぼす。
『森くんオッケーしてくれたよ。図書室で先に勉強してるね』
気が合わないかもと思っていた小倉さんと、まさかの森くんで意気投合して仲良くなった。
勉強会だって、さっそく今日の放課後に誘ってくれたし。(なんて良い人!)
なのに・・・急な委員会呼び出し。
マジありえん。
三年の美化委員長がプリントを配りながら黒板の前でしゃべっているのを妬ましく見つめる。
早く終われー!
やっとミーティングが終わり、さっさと教室をあとにして廊下を歩きながら小倉さんにラインをする。
図書室の前に着き、軽く深呼吸。
30分の遅刻。
既読がつかないけど、勉強に集中してるって思っていいのかな。
まさか、もう勉強終わって帰ってないよな?!
不安と、森くんに会える緊張が入り混じって腹の奥がきゅぅっとする。
オレってけっこう臆病者かも。
情けない自分に凹みながら、ドアを開けて中に入る。
教室がある校舎とは別の、第二校舎の3階の突き当りにある図書室は広くて静かだ。
本棚が並ぶ中を歩いて奥へ進むと、個人用の机が窓際に沿ってズラッと並んでいる。
複数で座れるテーブルは低い本棚が並ぶ所に[[rb:等間隔 > とうかんかく]]に設置してある。
中間テスト1週間前ということもあって、勉強をしてる人が何人かいる。
遠目で顔を確認しながら小倉さんと森くんを探す。
なかなか見つからず、気持ちばかり焦る。
マジで帰った?!
よく見るとまだ奥にもテーブルがあるのが見え、先へ進むと金髪頭が目に飛び込んでくる。
離れていても目立つ存在感。
森くんだ!
金髪頭を目指して突き進むと、テーブルに座って勉強をしている森くんと目が合った。
よかったー! まだ帰ってなかった!
ホッとするのもつかの間、目の前の森くんに緊張で体が硬直する。
ヤバイ。会えたのはいいけど、どうしょう!
「小倉さん今、トイレに行ってる」
「え?」
急に話しかけられ、頭の中真っ白。
数秒経って、ようやく思考回路が復活。
「そっか! えーと、小倉さんに聞いてると思うけど、一緒に勉強してもいい・・・かな?」
慌てて貼り付けた笑顔が引きつる。ついでに、声も。
「・・・社会得意?」
「え・・・うん、普通に」
「じゃ、いいよ」
「・・・」
「座れば?」
「あ、うん・・・えーと、お邪魔・・・します」
促されるまま森くんの真向かいの席に座る。
隣を見ると、小倉さんの私物らしき鞄が椅子の上に置いてある。
ノートと教科書を広げて黙々と勉強をしている森くん。
オレも鞄から英語の教科書とノートを取り出しテーブルに広げて勉強を始める。
いやいやいや、集中できないって!
やべー! 森くんと普通に会話できた! マジすご!
朝の「ん」のやりとりはなんだったんだよ! て言いたいくらい普通に会話できた!!
ていうか、頭金髪なのに、しゃべると全然普通だ。普通のDKだ。
コンコンとテーブルを小突く音が聞こえ、顔を上げると森くんがこっちを見ていた。
「日本史なんだけどさ、中学でやったとこも出るとか言ってたけど範囲わかんなくない?」
普通に勉強の質問してきたー!!
顔が緩みそうなのを必死に引き締めて平常心を装う。
「多分、中三の勉強を見直す程度で大丈夫だと思う。中間テストって言ってもまだあんまり勉強してないし、中学の復習テストだと思えば」
「なるほど。ありがと・・・名前・・・」
森くんがフリーズしてて、ハッと肝心なことに気づく。
「ごめん、名前言ってなかったよね。オレ、立川」
クラスメイトとはいえ、まだ1ヶ月しか経ってないし、朝のこと覚えてなかったらほぼほぼ初対面だ。
「俺こそ悪い。クラスメイトなのに。立川、よろしく」
森くんに名前呼ばれたー!!
「よ、よろしく、森くん」
「呼び捨てでいい」
「あ、うん。じゃー、よろしく・・・森」
「うん、ていうか、英語もわかんなくない?」
この後も、小倉さんがトイレから戻ってくるまで森くんとしゃべりながら勉強した。(ほとんど雑談ばっかだったけど)
3人で1時間ほど勉強したあと、小倉さんは自転車で帰宅。オレと森くんは駅まで一緒に帰った。
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