いつかドロシーと結婚式を


 今日は村の祭り当日。都会のように大々的に行われるようなものではないけど、のんびりとした空気の中で和気藹々と村人同士で交流を深めるこのモンカ村の祭りの雰囲気は割と好きだ。


 そして今回は俺とドロシーはコレットの手伝いとしてカフェで働くことになったわけで、開店する前は結構バタバタしてた。ドロシーはやっぱり緊張しているみたいで、俺の服をぎゅっと掴んでいる。


「大丈夫だよ、ドロシー。村の連中は優しい人しかいないから」


「……う、うん。で、でもね……うまくできるか、不安なの」


「それは俺が保証するよ。前に練習した時も出来てたし、何よりドロシーが接客してる姿も俺は可愛いと思う」


「ふぇ!? な、何を言ってるのエリック……」


「事実を言っただけだ」


「……そ、それならエリックだって……かっこいいよ」


「おーい、もうすぐお店開けるよー」


「あ」


 随分と楽しそうにしてますね〜と言いたげにニヤニヤと笑いながらコレットがお店を開けると伝えてきた。もうそんな時間か、なんだかんだ俺も緊張してきたな。でもまぁ、なんとかなるだろ。


「わかった、それじゃ、頑張ろうドロシー」


「う、うん!」


 そうして、お祭り限定だけどコレットのカフェがオープンした。すると結構な数のお客がお店にやってきて、早速忙しくなってきた。


「は、はい! ご、ご注文は以上ですね。あ、そ、そうです……え、エリックの……こ、婚約者……です」


 コレットが料理を作って、俺とドロシーが料理を運んでいるんだが、やっぱりドロシーはいろんな人から話しかけられていた。なんだかんだドロシーも楽しそうにしているから良かったな。ナンパしたやつは料理ではなく拳をプレゼントしてやるつもりだが。


「おおエリック。お前さんこんな可愛い婚約者を持って幸せだなぁ」


 この村の村長もお店に来ていて、料理を持ってきたらそう話しかけられた。この人にはかなりお世話になってきたから、頭が上がらない存在だ。


「まぁそれは……その通りだけどさ」


「かかかっ、本当に幸せそうだな。そういえば結婚式はしないのか? 村の連中に頼んで、わしがセッティングしてもええぞ?」


「結婚式……」


 その言葉に、俺はハッとさせられる。確かに、婚約者としてドロシーを迎え入れた以上、いつか俺たちは結婚する関係だ。それに、俺だってドロシーと結婚したい気持ちはある。


 ……。


 でも、俺はいざ考えてみると少し不安なんだ。俺は本当に、ドロシーを一生幸せにできるのかなって。


「なんだ、まだ決めてなかったのか」


「……ああ。ドロシーのトラウマが解消されたわけじゃないし、まだドロシーを心から幸せに出来てないから」


「ほぉ。ならいつ結婚するんだ?」


「いつって……」


「あんまり長引かせるのも良くないとわしは思うがのぉ。まぁ、お前が決めることじゃから、わしはとやかく言わんが」


 村長の言葉が、すごく自分に刺さる。このままずっとドロシーとの関係を曖昧にし続けていたら、俺たちにとっても良くないことは間違いない。なら、俺は覚悟を決めないといけないんだろう。


「……ありがとう、村長」


「おお、わしが役に立ったのならそれは良かった」


 そして俺は、あることを決めた。ドロシーに俺が作る最高の指輪をプレゼントするって。そのためにも、これから頑張って指輪の作り方とか勉強しないといけないな。……それと、プロポーズもどんな風にするか決めないとな。


 ――――――――――

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