ドロシーによしよしをする
「本当にドロシーが作った料理は美味しいなぁ」
「も、もうエリック……。え、エリックが作ってくれた朝ごはんも美味しいよ」
ある日の朝。俺たちは一緒に作った朝ごはんを食べながら、お互いを褒めあっていた。そりゃあ、俺としてはドロシーの料理が本当に美味しくて幸せだし、ドロシーも俺の料理を美味しいと思ってくれていることも嬉しい。ほんと、いいことしかないや。
「きょ、今日はお家にいるの……?」
「ああ、お金も稼いだししばらくは武器作りとかに専念しようと思っているよ。あ、もしどこかに行きたかったら遠慮なく言ってくれ」
「う、うん……。で、でも今日は……エリックと、二人きりでいたい」
少し恥ずかしそうにしながらもそう懇願してくれるドロシーを見て、俺のハートはドクンと大きく動いた。でも、ドロシーからそんなこと言ってもらえたらそうならないほうがおかしな話だ。よし、今日は早めに作業を切り上げてドロシーと一緒にいられる時間を作ろう!
「分かった! それじゃあ、早く作業を終わらせ——ん?」
ふと、家の外からゴソゴソと音が聞こえてきた。誰か来たのかと思って外を見てみるも、辺りには誰も見当たらない。
「誰もいないな……。ドロシー、音聞こえた?」
「き、聞こえたよ……。え、エリック……」
得体の知れない来訪にびっくりしてしまったのか、ドロシーは震えながら俺の手をぎゅっと握った。きっと、誰かに連れ去られてまた奴隷にさせられるんじゃないかって恐怖が襲いかかってきたんだろう。
「安心して、ドロシー。俺が絶対、ドロシーのこと守るから」
「え、エリック……」
そんなドロシーを婚約者として守るって決めたんだ。俺は手を握り返して、優しく笑いかけながらそう伝える。ドロシーはそれで少しだけ安堵したのか、身体の震えは落ち着いていた。よし、早くドロシーが安心できるように音の原因を探るか。
「ここら辺だと思うんだよなぁ」
ドロシーの手を繋ぎながら外に出て、音が聞こえてきた庭まで来てみた。だけど、人影は全然ないし気配も感じない。やっぱり気のせいだったのかな——!
「え、エリック……そ、そこ!」
ふと後ろから音が聞こえてきた。ドロシーはそれにびっくりして俺の手を強く握る。振り向いてみてみると、草むらがガサゴソと揺れていた。あれ、これってもしかして……。
「ワン!」
「おお!」
揺れている草むらに近づいてみると、そこには首に鈴が付いているぬいぐるみのような小さな犬っころがいた。子犬かな? もしかしたら迷子なのかも知れない。多分鈴が付いているから飼い主がいるっぽいんだよな……モンカ村の連中に聞いてみるか。
「よかったぁ子犬で。あ、こいつ人懐っこいな。おーよしよし」
近くに寄ってみると子犬は尻尾を振りながら俺の側に近寄ってきたので、ついつい頭を撫でてしまった。可愛いなぁ、うちでも買ってみたいとか思っちゃうなこれ。
「……え、エリック」
「あ、ドロシーも触れ合うか?」
「……ち、違う。私も……頭、撫でて欲しいなって思って」
「え」
「そ、その……め、めんどくさいってことはわかってるんだけど……ちょ、ちょっとだけ、その子犬さんに……嫉妬しちゃって」
思ってもみなかったことをドロシーから言われて俺はついびっくりしてしまう。まさかドロシーが子犬に嫉妬するなんて想像もしてなかったから。……でも、それくらい俺のことを思ってくれているのは、正直めちゃくちゃ嬉しい。
「わかった。ほら、よしよし。これでいいかな?」
「う、うん……。で、でももっとして欲しい……い、いいかな?」
「もちろん」
優しくドロシーの頭を撫で続けていると、ドロシーの表情がだんだん柔らかくなっていった。やっぱりまだぎこちなさはあるけど、それでも嬉しいってドロシーが思ってくれていることが俺に伝わってくる。そんなドロシーの姿を見ていられることが、俺もすごく嬉しい。
「……二人とも何やってるの?」
「あ!?」
ひたすらドロシーの頭をなでなですることに集中していたら、いつの間にかきていたコレットに気づかなかった。しまった……ここが外だということをすっかり忘れていたし、こんなところ見られたのはめちゃくちゃ恥ずかしいぞ。ドロシーも今気づいたのか顔がボンッと沸騰したかのように急激に顔が赤くなっている。
「いやー二人のラブラブを邪魔しちゃってごめんね」
「き、気にするな。あと今のは忘れてくれ。そ、それで何の用だ」
「いや、ここに子犬がいるんじゃないかと思って……あ、いたいた」
どうやらコレットは子犬を探していたようで、見つけた子犬を抱きかかえた。
「あれ、犬飼ってたのかコレット?」
「いや、私じゃなくて村長の子犬だよ。村中みんなで探してたんだけど見つからなかったから、もしかしたらここなんじゃないかなーって思ってきてみたの。ま、私が見たことは村のみんなには言わないから安心して」
「……そうしてくれ」
「はーい。じゃあ、またね」
そうして子犬を連れてコレットは帰っていった。ああ、なんかどっと疲れた気分だ。見られたくないものも見られちまったし……。
「……ね、ねぇエリック」
「ん? どうしたドロシー」
「……つ、続き……家の中で、して欲しいな」
どうやらドロシーはまだまだして欲しいみたいで、訴えかけるような視線を送りながらお願いしてきた。まぁ、コレットが来たことで途中になっちゃったからな。
「わかった。じゃあ、もうちょっとだけな」
「……う、うん!」
そんなわけで、俺は家の中でもドロシーによしよしをしてあげた。……なんか、俺もして欲しいなとか思っちゃったけど、それはお願いできなかったのは内緒だ。
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