一緒に武器作り


「おはようドロシー。よく眠れた?」


 ドロシーと同じ部屋で寝た翌朝。昨日と違ってドロシーは俺よりも後に起きてきた。どうやらぐっすりと眠ることができたみたいだ。


「お、おはよう……エリック。う、うん……自分でもびっくりするくらい眠れたよ」


「それは良かった。朝ごはんもうすぐできるからちょっと待っててね」


 今日は朝ごはんの定番とも言えるベーコンエッグを作っている。それとこの前立ち寄った街で買ったパンも焼いているので、まさに定石な朝食といった感じだろう。これもドロシーに気に入ってもらえたら嬉しいな。


「お待たせ。ほら、召し上がれ」


「い、いただきます……お、美味しい! 美味しいよ、エリック!」


「そういってもらえたら俺も嬉しいよ。ベーコンエッグもう一ついる?」


「……い、いいの?」


「もちろん、ドロシーのために作ったから」


「……ありがとう」


 ついついドロシーのことを思って多めに作ってしまうんだけど、ドロシーは全部食べちゃうからちょうどいいくらいなのかもしれない。……多分、身体がやせ細っているのを見るにまともなご飯を食べていないだろうから、よほど身体が食事を欲してしまうんだろうな。


「そうだドロシー。今日は俺、武器を作ろうと思うからしばらく工房にこもる予定なんだけど、良かったら見にきてくれないか?」


「こ、工房? ち、近くにあるあれ?」


「そうそう。もちろん安全なところから見てもらうけど、ドロシーに俺が成長したところ見せたいからさ」


 もちろん、その気持ちもある。でも、それ以上に今のドロシーを家で一人にするのは正直不安だから、近くにいてほしいってのが本音だ。多分、まだ長い時間一人になるのはドロシーも怖いだろうし。


「わ、私なんかいたら……邪魔になっちゃうかもよ?」


「そんなことないさ。ドロシーがいてくれた方が、俺のやる気も上がるし」


「そ、そう……なの? じゃ、じゃあ……見たい。見ていい?」


「ああ! それじゃあ、朝ごはん食べ終わったら行こう」


 それから、多めに作った朝ごはんをドロシーと一緒に平らげて、俺たちは工房に行った。ここは俺が自分で作った工房で、思い返せばすっごく苦労したなぁ……コレットを含め、村の人たちにもなんだかんだ手伝ってもらったし。でも、こうして武器を作るところに誰かを招くってのは初めてかもしれない。


「それじゃあ、ドロシーはこのソファーに座ってくれ。あ、そこの棚に街で買ったお菓子とかあるから食べていいよ」


「う、うん……わかった」


「よし。じゃあ、作業始めるか」


 作業道具を取り出して、俺は早速武器を作り始めた。ドロシーと一緒に遊んでいた頃は、まだこの道を志してはいなかったけど、何かと花を使った冠とかを作ってプレゼントしてたなぁ。こんなのダメと言われて受け取ってもらえなかったけど。


 いつか武器以外にも、ドロシーにふさわしい冠とか作ってあげたいな。まぁ今の俺は武器専門だから一から勉強しないといけないか。その材料とかも金がかかるだろうし、もっともっと稼がないと。


「……」


「ん、どうしたんだドロシー?」


 作業を続けていると、何やらドロシーがじーっと俺のことを見つめてくる。あれ、なんか変なものでも身体についているのか?


「……凄いね、エリックは」


「そ、そう?」


「う、うん。私、全然武器作りに詳しくないけど……エリックが昔からすっごく頑張ってきたんだって、見ていてわかるの。だ、だから……見惚れちゃっていた」


「そ、そこまで言われると照れるな……」


 料理も褒められたけど、何より武器作りはあの人に弟子入りしてから数年間ずっと頑張ってきたから、その努力をドロシーから褒めてもらえるのが何より嬉しくて、ついつい照れてしまう。


「わ、私に何か手伝えること……な、ないかな? な、何かエリックの力になりたい」


 手伝えることかぁ……。ああ、なら簡単な作業を一緒にやればいいか。それならドロシーも怪我をしないだろうし


「そしたら、この武器の手入れを一緒にしようか。まだしてないから、売り物として出せないんだよ」


「う、うん! ど、どんな風にすればいい?」


「えーっと……あ、手を触っても大丈夫?」


 昨日一緒に手を繋いだにも関わらず、ついつい気になって確認してしまう。そもそも、俺はここ数年は武器商人兼職人として仕事一途に活動してたから、異性経験が皆無と言っていい。日々手探りでドロシーとの日々はこれでいいのかぁと考えることばかりだ。


「……もちろん。エリックなら……いいよ」


 少し恥ずかしそうながらもそうドロシーが言ってくれたので、手に触れながら俺は手入れの作業のやり方を教えた。


「おお、さすがドロシー、飲み込みが早い」


 元々のポテンシャルもあってか、ドロシーは教えたらすぐできるようになって、次々と武器がピカピカになっていく。あれ、これなら手入れ以外にも色々と手伝ってもらうことができるのでは?


「そ、そう……かな?」


「ああ! ありがとな、手伝ってくれて」


「……ど、どう……いたしまして」


 まだまだ褒められることに抵抗があるのか、ドロシーは素直に褒め言葉を受け取ってくれないけど。それでもやり遂げた達成感からか、少しだけ穏やかな笑みを見せてくれた。


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