世界の十字路6~選ぶ道~

時雨青葉

プロローグ

流浪の民

 彼らは、ひっそりと存在している。

 誰にも知られることなく、ひっそりと。



 彼らを見た者も、彼らに会った者もいない。

 故に、彼らに関する資料などはどこにも存在しない。



 彼らは流浪るろうの民なのだ。



 安住の地を持たず、どこにも属さず、ただ時の流れに身を任せるように、延々と果てしない旅を続けている。



 だが、それを知っている民は少なかった。

 何故なら、その流浪の仕組みがかなり特殊だからである。



 彼らはまた、今日も旅を続けている。





 ―――自分たちも、知らないところで。




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