第1話④

 人間が逃げ去った後、龍之鳥池には例の黄金鳥の姿はなかった。水中に巨影もない。

 花火大会も終わり、何事もなかったようにただ静謐が広がる。


 その静けさを破って野生動物たちがわらわらと現れる。動物たちは池の周りに集まって身を寄せ合う。

 それから数日後、その地域一帯を豪雨が襲い、川が氾濫して山でも土砂崩れが起きた。例の池と神社周辺には被害がなく、そこに集っていた野生動物たちは無事であった。

 


 空に、黄金鳥が飛んでいた。

 


――黄金鳥は水中では龍、地上では黄金の鳥に変化へんげする龍。鳥の姿の時

  は酷い声で啼くが、それは災いの前兆を知らせる声なのさ。

――災いを呼ぶ声とも言うようだね。けれど、それは人間の視点だ。黄金鳥は土地と

  そこの命を守っているだけさ。寂しがり屋で、周りから命が無くなるのが嫌だか

  ら危険を知らせている。貪欲なのさ。

――人間の世界でいう、緊急アラートみたいなもの。

――ほら、アレは人間が不安に感じる音なんだろう? それと同じさ。やかましく騒

  ぐんだ。

――危ないぞ、危ないぞ、危ないぞ。てね。

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