第15話

いきなりのプロポーズにびっくりしてしまったけど、ここでお受けしない訳ないわよね。証人はたくさん居るから、あとから家族がいちゃもんつけたりできないし。こんなチャンス、逃してなるものですか!


「お受けしますわ。今後ともよろしくお願いします」


「光栄です。私の事はフレッドとお呼び下さい」


「では、わたくしはシャーリーと呼んでくださいな」


やりましたわ。これで婚約しない事は絶対にない。フレッドが嬉しそうに笑ってらっしゃって素敵すぎます。かっこいいです。愛してますわ。


いけない、急にどうしたのかしら。これが恋なのかしら? ドキドキしすぎてよく分からなくなってきたわ。


「フレッド、急すぎるぞ」


呆れた様子のクリストファー様が笑っておられるわ。お父様とお母様は、まだ事態が飲み込めていないわね。今のうちに話を進めてしまいたいわ。


「フレッド様がとても優しそうで素敵だったから嬉しいですわ。ね、お父様、お母様良いでしょう? だってわたくしが早く嫁げば、わたくしの予算はお姉様に使えるわ。ほら、ケイリー様の愛人様のご予算もあるでしょう? 早くわたくしが家を出れば、お姉様はお幸せだと思うの! お姉様のためよ! お姉様の!」


とにかく、姉のためを強調する。わたくしが自分の意見を通したい時の常套句よ。


「そ、そうか! そうだな! おめでとうシャーリー!」


「こんなに情熱的なプロポーズ初めて見たわ! 早く結婚なさいな」


よし! 両親も賛成してる!


「では、せっかくですからここで婚約の契約をしてしまいましょうか。我々が見届け人になりますよ。なんならいっそここで結婚の契約もするか?」


クリストファー様! 素敵な提案ですわ。さすがエリザベスのお兄様だわ!


「それは急過ぎるだろう」


「それで構いませんよ。持参金も要らないのでしょう?」


お父様、ナイスよ! いつもイライラしててごめんなさい! 今だけは心からお父様を尊敬するわ!


「そうね! 早くシャーリーが嫁げばアイリーンの予算も増えるし、シャーリーも望んでいるようだから、わたくしも賛成しますわ」


お母様! いつも姉ばかり贔屓してる毒母だと思っていてごめんなさい。わたくし、今ならお母様を心から尊敬できるわ! お姉様とお幸せに。いつまで保つかは知らないけれど!


「両親は賛成してますわ!」


「いや……しかし……」


「フレッド、こんなチャンス逃すなよ。シャーリー様は、フレッドがお好きでしょう?」


「大好きですわ!」


「分かった。では婚約ではなく結婚致しましょう。ですが式などの準備もありますし、一度はご自宅に戻られた方が宜しいでしょう。近日中にお迎えにあがります」


シャーリー・デル・グラール 17歳


本日、シャーリー・エル・ドゥイエになりましたわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る