第8話
夜会が終わった次の日には、両親のもとにフレッド様とわたくしのお見合いを勧める連絡が入った。
「デミック公爵家のクリストファー様からのご紹介だと?!」
「え……あのイケメン公爵家の方だったのね。お父様! わたくし公爵家の方にお名前を呼ばれたわ!」
「そうか、さすがアイリーンだな!」
「公爵家のご紹介じゃお断わりはできないわ。一度はお会いしないと」
「ご紹介いただくのは同じ伯爵家よ。しかも辺境。シャーリーには田舎が似合うわ。わたくし、シャーリーにも幸せになって欲しいの」
両親はびっくりしていたが、姉が賛成した事もあり、まず顔合わせだけはやろうということになった。
「ふん、辺境伯か。お前には田舎が似合いだ。先方から求められているんだ、持参金などいらんだろう。アイリーンの式に金をかけてやりたいしな」
「わたくし、田舎は無理よ。でも、シャーリーなら大丈夫よね」
「持参金なしなんて、シャーリーが嫁ぎ先で冷遇されるわ。かわいそうよ」
はぁ、ニタニタ笑いながら言う会話じゃないわよね。そしてまさか両親まで辺境伯の地位を知らないなんて思わなかったわ。持参金なしだと断られるかしら。エリザベスの紹介だし、絶対いい人なのに。
「シャーリー、顔合わせはこのドレスがいいわよ!」
勘弁してよ……。ダントツでダサいドレスじゃないの。むしろよくこんなの作ったわよね。姉はセンスがなさすぎるわ。だからいつもわたくしのドレスを取ってしまうのよね。自分の注文したドレスはほとんど着ないから勿体なさすぎるわ。
最近は姉のドレスをさりげなく誘導してデザインがいいものにしてる。これも先生の教えその3の応用よ。
「お姉様、嬉しいけどドレスは自分で選びますわ。お姉様は、ご自分の式の用意もあるでしょう?」
「まさか買ったりしないだろうな?」
「購入予定はありません。ご安心くださいお父様。それに、お姉様の式の準備で物入りでしょう? 次の夜会のドレスは作成せずにリメイクしたらいかがですか? 袖を通してないものもありますし」
「そんなみっともないこと出来るわけないでしょ! あぁ、そうだお父様! ケイリーがわたくしを旅行に誘ってくれたの! 婚前旅行よ! 費用は全部ケイリーのお家が出してくれるわ! ね、行っていいでしょ?」
「そうか、式まであと1か月だものな。すこし羽を伸ばしてきなさい」
「良かったわね。アイリーン」
そこからは延々と姉の自慢トークが続いて、嫌になったわたくしは部屋から逃げようと思ったんだけど、姉が逃がしてくれなかったわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます