第7話

「身分は問題ないよ。シャーリー様だって伯爵令嬢だろう?」


「辺境伯と、ただの伯爵家を同列には扱えませんわ」


あら? クリストファー様が嬉しそうに笑ってらっしゃるわ。周りから令嬢方の黄色い声がする。


「エリザベス、確かにシャーリー様はフレッドに相応しいお方のようだね。辺境伯の役割を正しく理解している方は少ないんだよ」


「そうなのですか? 公爵家と同じくらいの地位だと習ったのですが……」


先生の教え、わたくし間違って覚えていたかしら?


「あってるよ。素晴らしいね。近くフレッドを呼ぶから、ふたりで話してみないかい?」


「それがいいわ! そうしましょう!」


どうしましょう。どんどん話が進んでいくわ。良いのかしら……?


「シャーリー、こんなところにいたの?」


お姉様だわ! 話に夢中で、気がつかなかった。どうしよう、エリザベスに迷惑がかかるわ。


「ごきげんよう。アイリーン様。ご婚約おめでとうございます。シャーリー様がとても仲の良いおふたりで羨ましいと仰ってましたわ」


「まあ! ありがとうございます。嬉しいですわ」


エリザベス……これは先生の教えその3ね! そうだわ! わたくしもいつまでもビクビクしていられないわ。


「お姉様が、お幸せそうで羨ましいと話しておりましたの。わたくしもお姉様みたいに素敵な殿方と恋がしたいわ」


ケイリー様だけは御免ですけどね。


「そうなんですよ。アイリーン様。ですからシャーリー様に私の友人をご紹介しようと思って」


クリストファー様! 今それを言ったら姉に邪魔されますわ!


「シャーリーに、男性を紹介……? 誰を紹介するおつもりですの?」


不機嫌そうに姉が言う。周りも少し引いてるわ。お姉様まさか、エリザベスとクリストファー様のこと知らないの?! そうだわ、おふたりとも姉の名を呼んだのに名乗ってない。

これって遠回しに、貴方に名乗る意思はないっていうやつよね。姉は気が付いてなさそうだけど。我が国ではこう言われたら、すぐに相手の名前を呼んで知っていることを示すか、急いで正式な名を名乗って自己紹介しないといけないのに、姉は2回もスルーした。失礼すぎるわ。どうしよう、どうやってフォローしようかしら。わたくしの焦りをよそに、クリストファー様がどんどん話を進めていく。


「辺境伯のフレッドだよ。同じ伯爵家だしいいかと思ってね。辺境に住んでもいいというご令嬢が少なくて」


「辺境! そうですわね! シャーリーは華がないですもの! 辺境に行くのがいいと思いますわ!」


お姉様、また授業寝てたわね。辺境伯の地位が高いことを知っていればここで賛成するわけないわ。クリストファー様はニコニコ笑いながら姉をおだてにかかる。


「アイリーン様はご結婚されてお家を継がれるでしょう? おめでとうございます。結婚を急がれてると聞きましたが何か急ぐ理由でも?」


「ないですわ! ですけどケイリー様が早く式をしたいと仰るので」


「それはそれは、情熱的で素晴らしいですね。ではアイリーン様も乗り気のようですし、近いうちにフレッドをシャーリー様にご紹介しますね。気が合えばよろしいのですが」


「シャーリー、良かったわね!」


お姉様は意地悪そうに笑っていたけど、お姉様がエリザベスとクリストファー様に名乗らなかった事はすぐ噂になると思うわよ。はぁ、やっぱり早く家を出たいわ。

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