第4話

このままだと我が家は破綻する可能性が高い。愛人が5人よ! 5人! 愛人の年間予算ってわたくしの年間予算の半分よ?! それが、5人! ふざけないでよ! 伯爵家が持てる愛人の最大人数なあたり計画性が透けて見えて腹が立つわ。愛人の費用は結婚してしまえばうちが持つことになるし、冗談じゃないわ。


やたら早く式を挙げるよう先方が勧めるのも厄介払いよね。本音を言うなら、結婚前に愛人って種まき散らす宣言だしわたくしは受け付けない。姉はすっかりケイリー様にお熱だから、愛人は以前自分の命を救ってくれた恩人なんだ……だから肉体関係はないけど、愛人としてなら予算も出るから養っているだけなんだって言葉を信じちゃうし!


わたくしからも忠告したけどいつものようにヒステリーを起こしたから放置したわ。あぁもう! わたくしに影響がなければ今後も放置するのに!


予算の上限は決まってるし、領民に使う分は法律で減らせない。だから削るなら交際費や服飾費に伯爵家内部の食費、使用人を減らすなどだ。使用人の予算も下限が決まってるから、安く雇ったりも出来ない。愛人の予算なんて付けたら、真っ先にわたくしの予算が削られるわ。今だってわたくしの予算は姉の半分しかない。報告書ではわたくしと姉をまとめて記載することで誤魔化しているけど……。


ドレスの仕立てた数と、参加した夜会の数も招待状とともに記載するから見栄っ張りな貴族は毎回ドレスを仕立てる。堅実な貴族はそんなことしないし、ドレスもリメイクしたりしてうまく回しているけどうちは見栄っ張りな貴族なのよね。堅実がいちばんなのに。


なんでこんなにも細かいのかというと、この国の貴族は年間収支を全て領収書とともに国に提出しないといけないルールだからだ。


なぜなら、貴族のお金は税収だから。


事業をしている貴族は、事業の収支は報告しなくていいんだけど、税金で支給される貴族手当はみんなのお金だからと使い方をオープンにするのが習わしだ。


誰でもいつでも確認できるから変な予算にはできないし、娘がいるのに娘の予算が全くないとおかしいと指摘されたりする。


使い道をごちゃごちゃ言われたくない貴族は事業をするが、事業をしないとやっていけないのかという人もいるから悪口を恐れて事業が出来ない貴族もいる。ほんっと貴族ってメンドクサイわよね。


それぞれの領地からの収入も、すべてオープンにされるからチェックして、おかしいと思えば国に訴えられるのだ。それで不正がバレて取り潰された貴族もいるから、変なお金の使い方はできない。不正を見つけると報奨金が出るから、庶民は不正がないか常に調べている。


でもおかげで、わたくしも何も買ってもらえないなんてことはない。姉の予算の半分でも充分だ。だけど、これ以上減らされるとやっていけない。ケイリー様と姉の婚約を解消させるか、わたくしが先に家を出たいわ。出来れば、姉と関わらなくていい場所に……。

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