Novelber day 26 『寄り添う』

 生きる場所は同じでなくてもいいと思っていた。別の場所で別のことをして、別の人と会っていても、想い合っていればいつだって一緒なのだと思っていた。

 それでも、やはり欲は出てしまうもので。ぱしゃ、という水音と共に湯を掻き混ぜる手を、狭い浴槽内ではどうしてもぶつかってしまう足を、あの子の赤らんで汗ばんだ頬を見ていると、どうしても、心が浮き立つことを抑えられない。

 こうして傍にいられることが、同じ湯に浸かれるということが、言い様もなく嬉しくて。

 やっぱり、二人一緒に、寄り添い合って生きていきたいなって、そう思ってしまう。触れ合う膝や、水中で感じる相手の動きの一つ一つでさえ、あまりにも愛おしくて。

 私達みたいなカップルは、離れて生きる他ないって、誰が決めたのだろう。どうしてそうなってしまったのだろう。変えたいな。私達にも、幸せの先は見えるんだって――。

「どうしたの、もう茹だちゃった?」

 そう言いながら、悪戯っぽく笑うつぶらな瞳が、私を見つめた。私は苦笑し、手で水鉄砲の形を作った。

 ぱしゃん、と跳ねる水音に、明るい笑い声が跳ね返った。

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