Novelber day 23 『ささくれ』
最初は、ほんの小さなささくれだった。
「舐めておけば治るよ」
そう言って笑っていられるくらいの。
しかし放っておいても傷は治らなかった。日に日に痛みはズキズキと主張を強め、血で赤く濡れるようになった。それでもほんの小さな傷だからと、見て見ぬ振りをした。我慢した。
けれど、結局は何もかも無駄だったね。自然治癒なんて信じていないで、傷に向き合い、適切に処置をするしか、治す方法は無かったのに。
この時間だって、同じようなものなのでしょう。私達は喫茶店で向かい合わせに座りながらも、ずっと不機嫌に押し黙って、お互いではなく、ただ窓の外の雨を見ている。
どちらがこの傷に対処するかを、私達は押しつけ合っている。
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