Novelber day 9 『一つ星』
かつて天に輝く一つ星は、航海の指標だった。方角を定め、目的地へ迷わず進む為の、重要な指針だった。
今、我々が往くのは月明かりを映す海ではなく。物質の三態いずれでも無く、未だに正体の知れない暗黒物質に満ちた闇の海。
その果ての果てに煌めく恒星の光。星屑の帯の向こうに位置する、その眩い光の束を目指して飛ぶ。
「飛んで火に入るなんとか、って言葉があるがね」
「はぁ。私、地球の諺には明るくないので」
助手のロボットに冷たくあしらわれつつも、合成酒を一口あおる。
――この旅に、明確なゴールは無い。帰る先も無い。長い長い宇宙探索、その果てを知る為の旅の、ほんの一小節。私の記憶と経験も、いつかの死に保存され、次の世代に活かされる為の、材料作りに過ぎない。
それでも星は美しい。いつかそれも通り過ぎ、次の銀河に進むにしても。目指す光があること、それが手の届かぬ場所に有り続けてくれていること、そのものが――。
もう一口、酒をあおる。飲み過ぎだと機械音声に怒られるまでは、こうして浸っているのも悪くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます