物語の小箱 -2020 Novelberまとめ-

鳥ヰヤキ

Novelber day 1 『門』

 門が開く。凱旋した戦士達が、拍手で迎え入れられる。

 今日の為に摘まれた花が、屋根の上から投げかけられる。昼の光に煌めく花びらは、まるで幻の雪のよう。

 私はその列を食い入るように見つめる。トランペットが破裂する音が、遠くに響く。

 列の中に、あの人はいない。

 戦士達の顔、顔、顔の中に、あの人の顔だけがない。

 私はそれでも見つめ続ける。

 笑顔で迎え入れる市民達の顔の中で、きっと私の顔だけが、暗い穴のようになっているだろう。

 私はそれでも見つめ続ける。

 それでも。無駄だとわかっていても……。

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