正義のヴィラン

花田神楽

プロローグ 物語の世界

 人間の負の感情から生まれた魔物・怪異物が、街角に身を潜める現代日本。そこでは、時に人を襲う怪異物を討伐する祓魔師が活躍していた。自分の身を危険にさらしてまでも、人々を守るため戦う祓魔師は、正義のヒーローとして尊ばれていた。



 そんな祓魔師になれるのは、怪異物を視る能力と、怪異物を倒す武器となる呪力を持って生まれた人間だけ。日本では、才能のある子供たちは、十二歳になると一つの学校に集められることになっていた。呪力を制御する最低限の技術と知識を身につけるため、そして何より、祓魔師になる戦闘スキルを磨くために。その場所こそが、日本で唯一の祓魔師養成学校・国立土御門学院であった。



 学院の生徒たちは、戦闘科、研究科、支援科の三つの学科と、さらに細かい専攻に分かれて、十年間みっちり学習する。そのうち戦闘科は、将来最前線で戦うことを目指す生徒が集まり、戦い方や武器の扱い方を学ぶ学科だ。そんな戦闘員を、研究科が呪具の開発や怪異物の生態調査によってサポートしている。支援科もまた、救護班や指揮官を輩出することで戦闘員を支えていた。



 令和となった今、学院ではイタズラ好きの問題児二人組が、連日大暴れしていた。学院中に知れ渡る二人の名は、戦闘科刀剣専攻の一ノ瀬日高と、研究科怪異物専攻の目黒迅。彼らは、ヴィランでありながら正義を愛し、正義を貫くため規範に背き、学院に一大旋風を巻き起こしていくのだった。

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