創作の極限状態

今週あたりから、本格的に寒くなってきました。昨日はうちの地方も雪までちらつき、めっちゃ寒いです。


もう今年も残りわずか。何かと忙しい時期ですね。そんなあわただしい時期の土曜日にNHKの番組プロフェッショナルで宮崎駿監督の特集がありました。


宮崎駿監督ファンとしましては、当然見みした。内容は夏に公開されました「君たちはどう生きるか」の完成までのドキュメンタリーだったのですが……。


監督個人のある人物への強烈なラブレターでもありました。わたしはもうこのラブレターに茫然として、何回もNHKプラスで見なおしてます。泣きながら。


とんでもないものを見せつけられた気分ですよ。創作者の業を煮詰めてドロドロにして、精製されないまま出されたら、同じ創作している身としてはおかしくなりそうです。


この番組見た方もいらっしゃるかもしれませんが。小説書いてる人はぜひ見てほしい。Twitterでも、クリエイターたちの阿鼻叫喚で埋め尽くされていました。


誰に対するラブレターかというとそれは、数年前に亡くなった高畑勲監督へのものです。

高畑さんは、宮崎さんの五つ年上の先輩。宮崎さんにとって、憧れの先輩だったのですが。そこは、きれいな関係ではなく愛憎入り混じるなんとも複雑な関係でした。


高畑さんは、とにかく頭のいいインテリで完璧主義者で理想が高すぎる人。その自分の理想を人に押し付け、再現させるのです。


高畑さんの下で働いた人たちはとっても大変だったそうです。でも、宮崎さんはその高畑さんに惹かれて青春をささげたそうです。


十五年青春をささげたって、宮崎さん本人がおっしゃったそうです。高畑さんと宮崎さんがインタビューに答えた時のこと。


記者が宮崎さんにとって、高畑さんとは? って訊かれたら、一言宮崎さんはキラキラした目で、「パクさんです」(高畑さんのあだ名)と言うのです。


一方、高畑さんも同じ質問をされて、見たこともないものを見せてくれると思う。と考えながら高畑さんが言うと、めちゃくちゃうれしそうな顔をした宮崎さんは、「ほんと?」って高畑さんに確認するのです。


すごいですよね、もう完璧な片思い。しかし概して片思いとは苦しいもの。宮崎さんが恋焦がれるほど、高畑さんは宮崎さんの思いに答えない、それどころか、他の人を重宝したりする。


あのナウシカを高畑さんが30点と評したと聞いた宮崎さんは、ナウシカの本を真っ二つに割いたそうです。


自分のことを認めてくれないから離れたいけど、離れられない。離れられないどころか、影響を受けまくる。そんな人が自分を残して死んでしまった。


もう会えないから宮崎さんは、作品の中で高畑さんを再現しようと試みる。それが「君たちはどう生きるか」でした。


番組の中ではっきりと、主人公の少年は宮崎さん。少年といっしょに旅をするサギ男はプロデューサーの鈴木さん。そして、少年が旅をする世界の番人のようなラスボスの大叔父が高畑さんだと言っていました。


宮崎さんは、映画の中で高畑さんと対峙するわけなのですが、なかなか絵コンテがすすまない。絵コンテとは、アニメの脚本のようなもの。


すすまない絵コンテを前に、宮崎さんは「パクさん」を連呼するんですよ。ちょっと、これには号泣でした。


散歩にいっても、パクさんを思い。悩んだら、パクさんと話がしたいと言い。ついには、消しゴムがなくなったのは、パクさんがどっかもっていったって言い出すしまつ。


みてて、ちょっと精神状態大丈夫ですか? と心配になるレベルでした。大監督のとんでもない姿を見せられてるわけです。


このドキュメンタリーをとったディレクターさんは、ジブリに20年書生のように通っている方なので、信用されてるんでしょうね。


でもその方でさえ、見てはいけないものを見たっていってるんですよ。

高畑さんの亡霊に恐れ対話しつつ、自己の深い深いところまで踏み込んでいく宮崎さん。その深い探求を脳の蓋があいたと、表現されていました。


クリエイターは境界を越えないと、いいものはできないとも……。こえーわ! そんな領域に常人はいけませんよ。いったとしても、気が狂いそう。


そんな八十を超えた監督が極限状態で制作したのが「君たちはどう生きるか」でした。

わたし、もちろんこの映画見てるのですが、もういちど見てみたくなりました。そして、高畑さんである大叔父と宮崎さんである少年の最後の対峙をもういちど見てみたい。きっと、最初の時と違う見方になっているでしょう。


只今カクコン中で、みなさん創作に没頭されていると思いますが、脳の蓋をあけて励んでください。


わたしも、がんばります!


拙作「さよなら光源氏~小説家のおじさんと京都(府)でスローライフ」は、主人公のママがとんでもない人で、ヘイトが集まっております。


まあしかし、ただの悪人ではありませんので、続きをお待ちください。


https://kakuyomu.jp/works/16817330667785178428


よろしくお願いしまーす。












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