討伐
音響弾の音は少しずつ小さくなってゆく。
しかし、ジャイアントパンダの絶叫は段々と大きくなっていく。
『グラゥゥゥゥゥゥァァァァァァァァ!!!!!!!!!』
人間よりも断然肺活量が多く、いつまで経っても耳栓を外せそうにない。
そして、いくら耳栓でも防げる限度というものがある。
「━━あーーもう、うっさい!」
アサミは暴れているジャイアントパンダの懐に入っていき、そのまま腹にアッパーパンチを決めた。
『グァァ?ゥ、ゥゥゥァァァ……』
パンダの無重力を無視した行動は無くなり、急にフワフワと浮かぶ。
どうやら、今のアッパーパンチで気絶したらしい。
「……これで……終わりなのか?」
「えぇ、そう思いたいわね」
「わ、私、次弾、そそそ、装填しましょうか……?」
「いや、いい、大丈夫だ。アイツの顔を見てみろ」
「「━━?」」
そう言われたのでフワフワと浮かぶパンダの顔を見てみると、パンダが口から泡を吹いていた。
そこまでの気絶能力の高いアッパーだったことに、アサミ本人も驚きを隠せない。
「よし、帰るかぁ……アサミ・イナバはスノウラビットの腕が片方動かないし、何より疲れてるだろ、俺が後ろから
「━━うん」
なんだか申し訳なくなったが、それ以前に体がとんでもなくだるい。
今までの戦闘の中で一番動き回り、一番頭を使い、一番仲間のことを考えた戦いだった。
流石に体の限界を感じ始めていた。
なんとも無いとは、強がりで言える段階は既に十回は踏んでいる。
ここは甘えさせてもらおう。
スノウラビットの自動操縦を使い、アサミはコックピットの椅子に深く腰掛けた。
そのまま目を瞑ると、いつの間にかアサミは寝ていた。
すぅすぅという可愛らしい寝息が、小隊チャット越しに聞こえてくる。
「ははっ、そんなに疲れてるのか……ったく……」
だが、責めることはできない。
アサミには心の底から休んで欲しいと思った。ただそれだけだ。
しかし━━
(あんなにジャイアントパンダが暴れていたのにも関わらず、スキを見てアッパーまで決めたの……このヒト、本当に何者なのか分からないな……)
心残りがあるとすればそれだけだ。
時間としては、約0.2秒ほど。
その隙に30m超えの
どうしてなのかは気になるが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
今は静かに休ませてやろう。
モニター越しのパンダの背中を見ながらそう思う。
こうして、ジャイアントパンダの討伐は幕を閉じた。
ASCOFーアスコフー~純白の兎は宇宙で戦争の夢を見る~ 益田犬太郎 @masudainutarou2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ASCOFーアスコフー~純白の兎は宇宙で戦争の夢を見る~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます