最悪の失敗
「あーもう、何なの!?」
アサミは明らかに面倒な顔をしながらコントロールマウスを素早く動かす。
その手付きは、悪く言うならまるでゴキブリのようなすばしっこさであった。
その手付きが反映されたのか、スノウラビットは通常の
しかし、安心するのも束の間、まるでホーミングしているかのように横に避けたスノウラビットのことを頭で追った。
(や、やばっ、今度こそ当たる━━!)
だがしかし、そんなことで倒れることはないのが、このチームの強みだ。
”パァァンッ”
この弾けるような音。
さっきも聞いた。
クワイエットビーの━━ラァラの狙撃による音だ。
実際、銃弾よりも音の方が若干遅い。
それは遠くで狙撃しているなら尚更だ。
その弾けるような狙撃音が聞こえた頃には、またもやジャイアントパンダの体が頭から吹き飛んでいった。
『グワァァァァァァ!!』
パンダの叫び声が木霊する。
その光景は、恐怖を覚えるのには十分だった。
その光景をただ眺めることしかできなかったアサミに、コックピット内の
『あ、アサミ中尉!だ、大丈夫ですか?』
その声にどんどん意識が戻っていく。
目の前の非日常から、日常に戻されていく。
「え、えぇ。大丈夫……それより、
『た、多分、いいと思い、ます……眼にヒットしていたようにも見えましたので、このまま捕獲しても大丈夫だと思います』
「そっか。じゃあ、さっきの作戦のプランAで━━」
その時、ラァラはふと
『あ、アサミさん!うう、後ろ!』
「━━え?」
完全に油断していた。
ジャイアントパンダを倒しきっていたと思っていた。
しかし、この怪物は、そう甘くはない。
『グアアアァァァァァァァ!!!!!!!!!!』
パンダの雄叫びが聞こえたと思ったら、スノウラビットに強い衝撃が走った。
”ガシャァァン”
「くッ……な、何なの!?」
その衝撃による揺れで正直言って吐きそうだが、そんなことにかまっている余裕など無い。
カメラには、ズームアップもしていないのにも関わらず、ジャイアントパンダの頭がデカデカとモニターに表示されていた。
そしてその時、一つ、判断ミスをしていたことに気づいた。
「待って!眼が……両眼がまだ
その報告は、マルコヴナとラァラに衝撃を与えるには十分すぎる内容だった。
その作戦内容は、ジャイアントパンダと遭遇後、アサミが動く直前にそれを話していた。
「やっぱり、大体のサンプルを残したまま捕獲する方法って無いのかねぇ……」
「わかんない……でも、俺の作戦なら、なんとかなるかも……」
マルコヴナは少し自信有り気に話すものだから、ラァラは「何なんです?」と聞き返した。
「いくら皮膚が分厚くなった怪物だろうと、
確かに理にかなった作戦だ。
だが、勿論欠陥も多々ある。
「でも、もし暴れてたとして、狙いが定まらなかったらどうするんです?」
「確かにそういうこともあるだろうが……君たちなら大丈夫だと信じている」
しかし、その作戦は今、失敗に終わっている。
ジャイアントパンダの目元からは確かに血のような赤い液体が粒となりフワフワと浮かんでいるが、それはあくまでも目元。眼本体ではないのだ。
そして今、スノウラビットの腕がジャイアントパンダの腕力に捻り潰されんとされている。
最大のチャンスを、最悪の失敗で迎えてしまったのだから。
この作戦は失敗した。
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