第13話
「おじゃまします」
「どうぞ」
前来た時は仕方なく来たけど、今回は違う‥‥。
「とりあえずシャワー行ってくるね」
冬馬さんが先に入り、次に私が入った。
そして冬馬さんが手際良くオムライスを作ってくれた。お腹が満たされた事で緊張感が少しほぐれた気がした。
「わがまま言ってごめんね」
冬馬さんが洗い物をしながら言った。
「いえ」
本当は私も一緒に居たかったとは言えるわけもなかった。
冬馬さんがタオルで手を拭き、私の横に座った。
「本当はね、ももちゃんが彼氏と寄りを戻した時に諦めたはずだったんだ」
「そうなんですか‥‥」
「でもほぼ毎日顔合わせるんだもん、無理だよね」
そう言って冬馬さんは笑っていた。
「私は‥‥‥」
「安心して、別れてほしいとか言うつもりないし今日は本当にもっと一緒に居たいと思っただけで下心も一切ないから」
普通こうゆう時頭をよぎるのは柊生の事なのだろうか、それがない私は最低な女なのかな。
「冬馬さんがなくても‥‥」
「どうしたの?」
「‥‥‥いいですよ」
「えっ、それって‥‥‥」
冬馬さんの驚いた顔。まだ完全に乾き切っていない髪が妙に色っぽい。
「変ですよね。私には柊生がいるのに」
「俺は嬉しいけど‥‥」
冬馬さんと目が合って時が止まった。
秒数にすればほんの一瞬。
気付けば冬馬さんの唇が触れていた。
凄く優しくてそっと体を支える手から熱が伝わってくるようだった。
こんな近くに冬馬さんの顔がある。薄目を開けて見ると、こんなに綺麗な顔してたんだとつい見惚れてしまっていた。
口づけはだんだんと激しくなり、私の鼓動も早くなっていた時。
「ごめん‥‥」
冬馬さんがキスをやめた。
「どうしたんですか」
「こんなの自分勝手だよね。ももちゃんの気持ちも聞かずに」
俯く冬馬さん。
「正直に言いますね。‥‥やめないで下さい」
「‥‥本当にいいの?」
「私、凄くどきどきしてます。それに、こんなにももっとしてほしいって思った事に自分でも驚いてます」
「ももちゃん‥‥」
「冬馬さん‥‥」
今度は私から顔を近づけた。
冬馬さんが私の頭を支えながらゆっくり後ろに倒し、覆い被さった。
「後悔しない?」
「してもいいです。今はとにかく‥‥」
冬馬さんは私のおでこにキスをすると、次に口、それから首にキスをした。
そして、服のボタンを一つずつ外すと鎖骨から徐々に下に向かって口を移動させる冬馬さん。胸の膨らみに差し掛かった時は跡がつくんじゃないかと思うほど強く吸っていた。
「んっ//」
思わず声が漏れてしまった。
「ももちゃん、優しくするからね」
「‥‥はい」
ボタンを全部外し、冬馬さんが下着の隙間に舌を這わせた瞬間体の中心がビクンとする感覚がした。
「大丈夫?」
「だ‥‥大丈夫です」
私は高校一年の時に初体験は済ませているが、なんせお互い初めてだった事もあり終始ぎこちない感じで、気持ちよくなる事は出来なかった。
でもやっぱり冬馬さんは大人なだけあってよく知っているのだろう、まるで優しく包み込まれているみたいで、私は冬馬さんの事で頭がいっぱいになっていた。
深夜0時を過ぎていた。
私は冬馬さんに腕枕をしてもらい、顔を少し見上げるようにして見つめていた。
「なんか夢みたい」
「私もです」
一線を超えてしまった余韻なのか、冬馬さんがとてもかっこよく見えた。
そしてつい先程の事なのに思い出すだけで体が熱くなるようだった。
外はまだ寒いというのに私たちは下着姿で布団に入っている。
冬馬さんの体が暖かくて気持ちがいい。
人肌が恋しいってよく聞くけど、これが人肌なのかなぁ。
「このままだと風邪引くから服を着て寝ようか」
「そうですね」
私は心も体も満たされた幸せな気分のまま眠りについた。
しかし、これが私を苦しめる事になるとはその時は知る由もなかった。
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