第45話 ダウンな気持ちが続くエッセイ
この10日ほどはですね、筆を休めておりました。
気分が乗らなくって。
終わりを見切ったことで終わった気にでもなったのでしょうか。描ききってもいないのに。
書ける書けないをゆ〜らりゆらり、気分という名の波に右へ左へ。大いに揺さぶられておりますよ。
それでも毎度小説サイトは開いてみて、しかしどなたかの作品を読むでなく。今日起こったできごとを眺めては、過去の自作をパラパラとかいつまんで。パッとしない地味なお話の部分ばかりをなんとなく選んで。
そこでふと。
この3年でどこか成長したでしょうか。上から目線で『こう書いたらいいのに』とは重箱の角をつつけますが。あのころ以上に、私は上手に描けるでしょうか。
なんと言いますか、魂が違うような気がしてなりません。あれら作品には明日をも知れない、今にも前のめりで倒れるような気迫を文章の端々から感じます。
それに比して今の文は。小綺麗になった、角がとれてこぢんまりと丸くなった、貧相でみすぼらしい物語に映ります。
テーマが生きるか死ぬかからスポーツに変わったのですから、仕方ない部分もあるとは思いますが。言い訳ですよね、スポーツであっても緊張感は持っていていいはず。
オレゴンで試され続けていた日々から解放され、私はひと段落してしまったのかもしれません。約4割の人が銃を持つあの国で、なにか揉め事を起こしたらズドンと撃たれる、あの緊張感を失ったのです。
深夜のガソリンスタンドでたむろするのは、ひまを持て余した者たち、家を失った人々、酔った方々。その事務所兼コンビニの店員さんは、若い学生ではなく屈強な、何かあったら即応できそうなこわもて。そんな場所で鼻歌まじりで給油しながら、夜通し走ったおれごんはもう。消え去ってしまったのかもしれませんねえ。
物語はオレゴン産です。あそこで思いつきました。でも描くのは私です。毒気がすっかりぬけたおれごんジャパンです。
やっぱりスマホ執筆だからではないでしょうか。サッと取りだして、思いついたところをパパッと。短い時間でアイデアを形にして。
これが現代の正しい執筆スタイルなんでしょうけど。魂が入っていない根本原因は、やはりここではないでしょうか。
ひところに比べたらずいぶんと画面は大きくなりましたが、それでもPCのディスプレイに比べたら雲泥。一画面に表示できる情報はまるで違います。
よくよく考えてみれば一度も、日本に帰ってからは机で書いたことがないのでした。ずっとスマホだけ。
逆にオレゴンでは机だけが戦場でした。
こころ落ちつけて、しっかりと全体像を俯瞰しながらの執筆。終始動き続けている現場のいち小隊長でなく、大本営でどっしり戦略をねる元帥のように筆はふるわねば。
机に座って雑音がなく。なにか思いつくまでは画面と1時間でも2時間でも答えがみつかるまでにらめっこ。おれごんの執筆とは本来それ、スタートはもっと真摯なものでした。
6時間ものあいだ水分もとらずに脱水で足をつったり。お風呂でアイデアが出れば湯船が水になるまで粘って風邪をひいたり。今みたいに寝転がってスマホを宙に掲げてでなく。
以前のスタイルに戻しましょうか。
書式はつねにwordでしたもの、書くのはあくまで机に限定。アイデア出しや先々の粗い書き進めはどこでもいいとスマホで。あ、おれごんの場合お風呂は机に含みます。
そういえばすっかりゾーンに入っていないのです。足をつったのもお風呂で風邪をひいたのも、時間を忘れて執筆にうちこんでいたのが原因でした。
以前はよくゾーンに入っていたんですよ。たしかこのエッセイの前身でも報告しました。5分ほど書いたつもりが1時間が経っていたとか、ほんの数行書いて時計を見たら数時間経過していたとか。
タイムスリップものを描いているあいだ、作者の私も時を超えていたのです。時間を湯水のように使うだけの、片道専用ポンコツタイムマシンではありましたが。
あのころからですよ、無性に甘いものが食べたくなったのは。脳が栄養を欲していたんでしょうかねえ。
今も甘いものは食べ続け、ただただ太ってしまったおれごんが居ます。
それでももの書きをやめるという選択肢はないですね。それはこれまでのすべての努力を裏切る行為。たとえ腕がもげても最低限、今の物語と郵便もの、ロボものは完成させねば。そうでなくてはおれごん未来という人格が成仏してくれません。
書けたあかつきにはいったいどうなってしまうんでしょうか。神か仏のようになってバリバリ書き続けるのか、それともスッキリして成仏するのか。その時がくるのは楽しみではありますが。
今がその何合目かわからぬ身では、無間地獄かと、もがき苦しむありさまです。苦しんで苦しんで、ダラダラ寝転がって甘いものをむさぼっています。
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