豊穣
天上でのくらしにも慣れたころ、子宝を授かった。
ものは食べられぬし体は重いし、これほどつらいものかとこぼしていると、隣の男が「人並みに憧れていたのだろ」とわかったふうなことを言う。若者のなりをして雨風を司る龍だというのだから、憎たらしいことこの上ない。人の何がわかる、と思ったものの、それは己も大差ないので言わずにおく。
産まれた子は人のかたちで、ぽかりと宙に浮いたところを慌てて抱きとめた。父子が戯れに雨を降らせるたびに、地上は青々と潤ってゆく。豊かな秋、やわらかな冬、迎えた春にいくつもの産声が上がる。
「見ろ、あれも俺たちが育むこどもだ」
そう言って傍らに寄り添う龍神は、いっぱしの父親の顔をしていた。
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