ハッピーエンドに憧れて

フジケン

血の涙

テレビをつけた。


「昨日午後6時ごろ、東京都内のアパートで、このアパートに住む小学2年生の女の子が遺体で発見されました。女の子の身体には虐待と見られるアザがあり、警察は…」


警察車両に乗り込んでいく中年の男は、にへらと薄ら笑いを浮かべている。

「邪魔なモノを片付けただけ」と笑ったらしい。


ため息を1つ落として、右腕にある消えない傷をチラッと見る。

タトゥーであまり分からないが、結構目立つ傷がある。

幼い頃、父につけれた傷だ。

怒ると手がつけられないくらい暴力を振るってくる父だった。

楽しい記憶など1つもない。


2年前に成人を迎えた。

18で入社した会社は1年と経たず辞めた。

以来いろんなバイトをやって生活費を稼ぐ毎日。

どれも長くは続かない。


俺はもう立派な大人だ。

脇毛だって生えている。

なのに俺は大人が苦手だ。

厳密に言うと「30代男性」が苦手だ。

どこに行ってもうまく馴染めない。


怖いんだ。


見てるか?世の中のクズ野郎ども。

お前達のおかげで俺達の未来は真っ暗だ。

夢や希望に溢れる世界を思い描いてきた。

小学生の頃書いた未来予想図には、21で結婚すると書いてある。

会社でバリバリ働いて、休日は家族とドライブ、外食をして家路に着く。

そんな楽しい世界線があるはずだった。


それら全てが水の泡。

過去のトラウマで全て台無しになる。


丸々と太った大人達に、俺達の夢は食い尽くされているんだ。

ゲラゲラと耳障りな声で笑いながら。

本当によく食う奴らだ。


悔しい。

悲しい。

情けない。

死んだ魚のような目をしながら、

ドロドロとしたぬるく重たい空気に埋もれた街に溺れながら、

今日も枕に、血の涙を擦り付けて寝る。








「全部自分が悪いんだ。」

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