6話 校外活動
青い空
白い雲
……とくれば海が連想されるけど、ここは中華街。おいしそうな匂いにつつまれて育ち盛りの男子高校生たる僕らはすでに腹ペコだ。
「えー、こほん。……野郎ども! これから待ちに待った校外活動だ! そしてニューメンバーの発表だ。ついに我が部に絶対に逃げない会計と言う名の救世主が現れた! 豊臣政権の時に治部少輔だった石田三成だ! それじゃあ佐吉、オマエにこの腕章を渡す。これでオマエも正式な部員だ。腕章は制服につけておけよ」
相変わらず信長様は展開が急で強引だ。いきなりハイテンションで思わず驚いてて素っ頓狂な声をだしてしまった。
「えっあっはい?」
「よし。そんじゃあ今日の活動についてだ。今日は中華街で佐吉の歓迎会だ! ただし! 今回は生徒会に申請した活動だ! 間違っても他校生に喧嘩を売るんじゃねぇぞ! 」
待って!?
喧嘩を売るって何!?
普段は売ってるの?
ツッコミがいないんだけど!?
「三成、さっきから百面相をしているが大丈夫か? ……僕としては放っておいても平気だと思ったんだがな」
「吉継……! やはり持つべきは親友ですね!」
一部聞き取れなかったけれど、さすが吉継! 僕の混乱を即座に見抜いて声をかけてくれた。そうして吉継と話をしていると、今世では家の付き合いでたびたび会っていた大友殿が話しかけてきた。
「石田殿! ご機嫌よう。貴方様が会計係に就任する事をこの宗麟、心待ちにしておりました!」
「大友殿、おはようございます。そういえば会計係って大友殿ではいけなかったのですか?」
大友殿とて大企業の御曹司。彼も僕と同様に会計関係の教育を幼い頃から受けていたはずだ。
「いいえ、いいえ。最初はワタクシでした。が、利き手を負傷致しまして休養中なのです」
「そうでしたか。ご自愛くださいね。体は資本なのですから」
利き手の負傷とは穏やかでない。大友殿は吉継の不幸体質が移ったのだろうか?
「ガッハハハ! よう、やってるか!? アンタ、この前部費の回収に来てたヤツだろ? これはまた肝の座ったヤツが入ってきたなァ、オイ!!」
「ひゃっ、は、はあ」
びっっっっくりしたぁ……
いきなり後ろから来ないで欲しい。心臓が止まるかと思った。
「俺ァ佐々木道誉ってんだ! よろしく頼むぜ!」
佐々木、というと確か婆娑羅大名として知られていた。なるほど、とても破天荒な人だ。本能がコイツはヤバいと訴えている気がする。「人生、楽しんだ者勝ちだぜ!」と僕の肩を叩いて佐々木が去っていくと今度は小西が正則を連れて近づいてきた。
「よっ三成! おみゃー、あの佐々木を前にして「ひゃっ」だけとか前の時よりメンタルが鋼になってにゃーか?」
「……? そうでしょうか? もしそうだとしたら、今はいきなり出会い頭に殺される心配がないという安心から来るものかと。つーか、貴方は何ジメジメしてんです?」
「……三成。前世の事は謝らねぇからな。俺は徳川に付くことが豊臣存続にとって最善と判断した。お前は徳川に反発することが最善と判断した。それだけだ」
正則は再会早々ジメジメして少しうざったいな……そうだ、僕がジョークで和ませてあげよう! きっとジョークを言えるまでに成長した僕に驚くぞぅ!
「正則……本当に正則ですか? 僕のイマジナリーフレンドの……?」
「三成おまっ、お前ぇぇ! わざとだろ!? 絶対面白がってんだろ!? いつ! 誰が! お前のイマジナリーフレンドになったよ!」
あれれ、怒ったな。なんでだろ?
「お前、何で俺が怒ってんのかわかってねぇだろ! そんなんだから敵ばっか作るんだぞ!?」
正則はすごいな。僕の思ったことを言い当てた。それに単に怒ってるだけじゃなくて心配もしている気がする。
「もしかして心配してたんです?」
「なっ、なんだよ悪いか!?」
「いえ。ただ、意外だなって。ありがとうございます」
「おう、わかりゃあいいんだ。わかりゃあ」
アッハハ! ツンデレさんだ!
正則って結構優しいやつだったんだな。前の時はずっとケンカばかりだったから気がつかなかった。
「そういやぁ、ヒデ様が今度の合戦からお前を兵站係にするっつってたけど俺も手伝った方がいいか?」
今、正則から不穏な単語が聞こえた。現代って殺したり殺されたりはダメだった気が……
「合戦?」
「あっ知らない感じか?」
「あァ、明後日に教えると言っていたよ」
「なるほど、頑張ることだにゃ、三成」
「ちょっと、なんなんです? 僕を置き去りにするんじゃねぇです!」
みんなして僕を置き去りにして話を進める!後で教えてくれるからいいけど!
「そんじゃまあ、今生でもよろしくな、三成!」
「ええ。よろしくです、正則」
今度はケンカをしないように頑張ってみましょうか!
――
今回の初出人物
佐々木道誉
室町時代の婆娑羅大名で紅葉を取ろうとして怒られたから坊さんを殺したヤベー人。
怖いけど面倒見のいい兄貴気質。
最近の悩みは人に近づくとみんな気絶してしまう事。
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