3話 足軽制度
それは、まるで嵐のような再会だった。
「三成様ーーーーーッ! お久しぶりです! 某の事を覚えてくださっていますでしょうか!? 某です、某! 佐和山で足軽をしていた蘆野軽介です!三成様の忠実な僕です! あぁっ、その冷ややかな眼差し! まさに! 三成様!」
なんか来た。
蘆野はわかる。前世の僕の足軽だ。それでも、アイツってあんなテンション高かったっけ?
少なくとも睨まれて喜ぶような変態ではなかったはずだ。
「すみません、三成様。俺が付いていながら蘆野の暴走をとめることができませんでした……あっ、俺は覚えてますよね? 貴方様の島左近です」
蘆野の後ろから左近が続いてやってきた。うん。左近も覚えている。僕のいっとう大事な家臣だ。
ただ、記憶にある左近よりも自己主張が激しいけど。
「ああ、うん。お前達ですか。久しいですね。左近は今後も軽介の監視を頼みます。頼りにしていますよ」
「いやー、とうとう来ちまったかにゃ……頑張れよ、三成……蘆野はにゃあ……うん……」
小西が遠い目をしてつぶやいている。左近も心なしか疲れた雰囲気だ。僕の足軽はいろんな人に迷惑をかけたらしい。
「軽介は小西にも迷惑をかけていたのですね……家臣の非礼をお詫びします……」
家臣のやらかしは主君の責任だが、転生した今ではもう僕が責任を負う必要はないかもしれない。それでも、転生してでも縁を結んでくれたからには僕も軽介の非礼を詫びなければ!
「いんにゃ、詫びはいい。どっちかってーとジュース奢れにゃ」
「はあ、わかりました。放課後までに好きなモノを教えてください」
「おう、ゴチににゃりまーす」
迷惑をかけたのにジュース一つでいいなんて、転生を自覚してからつくづく思う。平和な世の中になったものだ。
「そういえば、三成様は足軽制度は使わないのですか?」
「足軽制度?」
初めてきく制度だ。
この学校にはまだまだ未知の制度があるのかもしれない。この前の部活では秀吉様や信長様達が何かをかくしているようなそぶりを見せていたし。
「ええ、この学校独自のものですが、日ノ本高校の帝王学部……この学部の生徒は全校生徒の中から2人だけ、在学中の秘書を選べるというものです」
「主におみゃーみたいな明らかに仕事量が多すぎる奴が使ってるヤツにゃ」
「なるほど……いいですね。最近は忙しさが戦国の時よりも激しかったので助かります」
秘書制度は本当に助かる。今の僕は戦国の僕が見ると確実に裸足で逃げだすほどの激務なのだ。
僕は過労死を回避して相手は秘書の練習ができる。うん。一石二鳥だ。
「それでは! 再び某を雇ってくださるのですね!? ィヤッホーーー! 三成様の! 足軽の座は! 某のもの!」
軽介はもう僕の足軽になった気でいるらしい。元々せっかちだったのがさらに磨きがかかっている。
「あー、うん。それでいいです。お前、態度はともかく仕事は優秀ですから……左近、お前もどうです? また、僕に仕えてはくれませんか?」
不甲斐ない主君ではあるもののついて来てくれるなら嬉しい。そう思って勧誘すると左近は待ってましたと言わんばかりの笑顔で答えた。
「ええ、喜んで。この左近、この時を心待ちにしておりました」
もしかしたら、もうついて来てくれない可能性があると思っていたためにこの返事はとても嬉しい。
また、三成の過ぎたるものとか言われそうだ。
言われないように僕も頑張るけどね!
「ふふっ、こき使ってやるので覚悟しておいてくださいね、鬼左近」
ああ、これからの仕事量を思うと少し気楽になった気がする。
――
今回の初出人物
島左近
石田三成の家臣で有名な人。三成の給料の半分で召し抱えられた。
転生しても左近は頼れる大人びた男。
蘆野軽介(あしの かるすけ)
名前のあるモブ。名前の由来は足軽。
史実にはこんな人はいません。
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