第10話 雨の日
今日は雨か…この大雨じゃ流石に部活は出来ないか…今週の日曜は練習試合だってのに…本当についてないな…このままじゃ優也に負けちゃうな…
俺は窓に流れる水玉を見て、溜め息をついた。2時間したら止むかな…。
2時間後、雨は止むことを知らず、むしろ強まっているように思えた。ぼんやりとした気分でいると、突然、傘を忘れたことに気づく。えっと、折りたたみ傘……
あ、そうだ。折りたたみ傘、壊れてたんだった。
「うわ、まじかよ〜」
思わず声が漏れる。
「あれ?颯、まさか傘忘れたの?」
菜緒がひょこっと俺の前に飛び出した。
「忘れた」
「折りたたみ傘は?」
「壊れてる…」
菜緒は「えぇ?」と驚いて笑った。
「じゃあ私の傘、入ってく?」
「助かります…」
「駅で方向わかれちゃうけど」
「駅まで入れてくれたら充分」
「はい、どうぞ」
「さんきゅー」
俺らは歩幅を揃えて歩き出した。
「ってかさ、朝もちょっと雨降ってたよね?」
「今朝、雨弱かったからさ、これぐらいなら差さなくていいかなーって思って。もうすっかり折りたたみ傘が壊れてること忘れてたよ…」
「朝も結構降ってた気がするけど」
「朝のはミストだよ」
「ミスト?」
「うん」
「何それ、ミストなんて言い方する??」
「言うっしょ」
「いや、初めて聞いたよ」
俺らは目を見合わせて笑った。正直、部活できないのは萎えたけど、菜緒と「あいあい」傘出来てるからいいか。
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