すずみ

お題：遅い人 制限時間：15分

　すぐ行くからと連絡があったので、最寄り駅に向かった。

　クリスマスシーズンということもあって駅前は賑わってた。

　まぁ……学生だけだけど。

　社会人は鬱陶しいような物を見る目でスルーしてる。

　私もその一人に該当するのだろうか。

　社会人でも、学生でもない。かといって収入がないわけでもない。

　異質といえるかもしれない。第一にvtuberというのは理解され難い職種。友だちにもいってない仕事だ。中身なんてバレたところでいいことはないので、あまり口にはしないようにしてる。

　そうはといっても、親は別。

　一緒に住んでる以上、何をしてるのかは知れたこと。

　PCの前でなにくっちゃべってるのと、ご飯のときによく言われる。

　仕事だからといえば、遊んでるじゃないと返ってくる。

　そうだよね。

　明らかにゲームだものね。

　それが仕事なんだよと力説しても効果は薄い。

　毎月親に5万円も渡してるのだ。これ以上踏み入ってほしくはない。

　それはそれ、あれはあれとして……。

　……こないなぁ。

　私のほうが集合場所に近いとはいえ、既に5分は経過した。

　それとなくメッセージを送ってみるが、既読はつかない。移動中なのかな？　たまーに本読んでたりしててあの娘はわりと放置する癖があるんだよね。

　スマホはきちんと確認してといっても、言うことは聞かれない。

　私たち付き合ってるんだよねぇ？

　婚約だってしたんだ。ぼちぼち同棲もはじめるって会話になってる。そんな二人に距離感とかよくわからないでしょ。

　10分後。

　やっと彼女はやってきた。

　ごめんね。電車混んでたという。

　電車混んでても、遅れないでしょとツッコミを入れると、そういうこともあるかもと首を傾げられた。

　なんていうか彼女は不思議系なのだ。

　今に始まったことじゃないけど、本当にこのまま結婚できるのだろうか。

　同性婚ってだけで騒がれるのに、微妙なお互いというのはよくない。

　遅れた分を取り戻すために、私は彼女の手を引き、デパートへと向かった。今日はそこでお気に入りの絵師さんの展示会があるのだ。

　そこを彼女と取材したかった。デートにもなるしね。

　平日ということもあって、あまり混雑してなかった。

　おかげゆっくりと見ることができた。

　遅くても大丈夫だったでしょと彼女が笑ったので、ちょっと困った。

　遅れと混みは関係ないよね、と。

　ほんと彼女とは飽きがこないーーそんな気がした。