第40話 対峙する道
「あぁ、本当だ。ミンティスを誘拐したのは……『魔神信仰ビアゾ』で間違いないだろう。レスカよ。国内に潜伏するこの者たちの根城を突き止め、倒してくれぬか?」
「!?」
よりにもよって『魔神信仰ビアゾ』か……。
それはゲーム時代でも何度か聞いた名だ。
さまざまなキャンペーンで、
ゲーム中では魔神そのものは復活しておらず一度も登場していないのだが、そのビアゾの奴ら自体が厄介な相手だった。
魔神が実在するのかどうかはわからない。
だが、その復活をもくろむ狂信者どもが、三〇〇年経ったこの世界でも未だに存在し、活動し続けているという事実に驚いた。
リアルとなったこの世界で、そんな気の狂った厄介な連中の相手をしないといけないのかと思うとぞっとした……。
だけど……避けて通る事はできなくなった。
【おめでとうございます。所属国の選択がなされ、キャンペーンのステージが進行しました】
久しぶりに聞くシステムアナウンス。
そして、目の前に浮かぶ、そのキャンペーンの内容によって……。
【指名依頼を受け、ベルジール王国に潜む『魔神信仰ビアゾ』の企みを叩き潰してください】
なんだ……今までの抽象的なメッセージが嘘のように、今度は直接的な内容が表示されている。
しかも、叩き潰すって……。
なんか言葉に感情こもってないか?
「主さま……」
ん? もしかしてキューレにも見えるのか。
そう言えば、この世界に来てからキューレがいる場でキャンペーンが進行するのは初めてだったか?
だから、システムアナウンスやキャンペーン進行のメッセージの表示に驚いただけかと思ったのだが、どうやらそれだけではなさそうな雰囲気だ。
「主さまはまさか……」
なにかを言いかけたキューレだったが、その言葉は他の者の言葉でかき消された。
「レスカよ。どうしたのだ? なにか起こったのか?」
オレの不審な態度に、国王様や宰相、ロイデが不思議そうにこちらを見ていた。
その中で次に口を開いたのはロイデだ。
「れ、レスカさん。もしかしてメッセージの魔法かなにかですか!?」
冒険者ギルドで口をすべらせたのが伝わっているのか、それとも魔法使いとしての知識から一人で導き出したのか、ロイデがそう尋ねてきた。
「そうですね。そのようなものが届いたので……」
「おぉ~レスカはメッセージの魔法が扱えるのか!?」
「いいえ。残念ながら受け取る事しかできません。時折ですが、謎の人物からメッセージが届くもので……」
あらかじめ決めておいた台詞だが、なかなかに無理がある。
でも、キャンペーンの話をしていいものかまだ判断がつかないし、もう少しこのことは黙っておこうと思う。
「ほう。そのような……」
「あ、あとでかまわないので、その、メッセージの魔法についてお話を聞かせてもらえませんか!?」
当然のように国王様はオレの言葉を鵜呑みにはしていない様子だったが、興奮したロイデのおかげで話を少し逸らす事ができたようだ。
「ん~、今日は依頼の話や今後の話などいろいろあると思うので、また次の機会でよければいいですよ」
「おぉ! レスカさん、ありがとうございます!」
稀代の天才魔法使いか。
こうして見るとただ単に好奇心旺盛な青年にしか見えないが、盗み聞きしたのもこういう性格から来ているのかもしれない。
それより、さっきキューレが言いかけた言葉が気になる。
目くばせしてキューレにはあとで話を聞くと伝えたので、国王様との話が終わったらすぐに聞かせてもらうことにしよう。
そもそも指名依頼そのものも気になる。話を先に進めてもらおう。
「ちょっと話がそれてしまいましたね。すみません。それではその指名依頼、そしてビアゾについてのお話を聞かせてもらえますか?」
「あぁ、そうだな。それではリセントよ。話を進めてくれ」
「かしこまりました。では、まずはこちらの資料を……」
配られた資料にざっと目を通すと、詳細な調査結果とそれに対する考察、今後の計画が纏められていた。
「それでは、まずは資料をもとに現状の説明をさせていただきます」
「あぁ、よろしく頼む」
それから三〇分ほどかけて、要点を抑えた説明がてきぱきとなされていった。
すごいな。
ここまで詳しく調べ上げているのか。
でも逆に言えば……ここまで調べ上げておきながら、ビアゾに出し抜かれたのか。
「本当に情けない話です。しかし、奴らの行動はいつも突飛の無いものばかりでして……」
「うむ。儂らも手を焼いておってな。奴ら本当に同じ人間なのかと疑いたくなるような行動や手段をとってくるのだ」
宰相が申し訳なさそうにいい、国王がそれに追従する。
まぁゲームでもかなり非道な行いばかりする集団だったしな。
それがリアルで行われているのかと思うと……ちょっとあまり考えたくなくなる。
「わかりました。指名依頼を受けさせていただきますので、ギルドに出しておいてください」
「おぉ! そうか! レスカよ! よろしく頼むぞ!」
拠点と思われる場所もいくつかに絞ってくれているし、これだけの調査資料があれば見つけるのは難しくないだろう。
オレは若干憂鬱な気持ちになりながらも、キャンペーンのクリアのためにもビアゾと対峙する道を選ぶのだった。
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