ライオンファミリー
スケキヨ&YOM
ライオンファミリー000話「僕たちはどこで?」-001話「彩里花の大事な話」
【〇〇〇 僕たちはどこで?】
僕たちは人じゃない。
だからここじゃ生きられない。
生きる場所は自分たちで作らないといけない。
例え、どんなことがあったとしても。
【〇〇一 彩里花の大事な話】
「ね、ねぇ晃志(こうし)。話があるんだけどっ」
僕が深夜営業のスーパーから戻り、食材を冷蔵庫に詰めたタイミングで彩里花(ありか)はそう切り出して来た。
「なに? 特にお土産はないよ」
「そうじゃなくて。ちょっとその……話があるの。聞いて」
「あ、あぁ。いいよ。どうぞ」
「こっち来て、こっち!」
この家は僕と彩里花、他二人が共同で生活をしている、いわゆるシェアハウス。共有スペースの居間に座った彩里花が僕を待っている。
「どうしたんだよ突然。僕、特になにもやらかしてないんだけど」
「そういう話でもないのっ。とにかく」
何かトラブルでないことを祈りつつ、僕は彩里花の前に座る。
「はいはい。聞くから」
「う、うん。……お願い」
彩里花の前に座ると、彩里花は急に落ち着きなくもじもじとし始めた。
築島(つきしま)彩里花(ありか)。僕と同じ十八歳になったばかり。僕も彩里花もまだ高校生という年齢ではあるが、学校には行っていない。
彩里花は僕を座らせはしたもののなぜか落ち着きなく、前下がりボブの髪をくるくるといじっていて話出そうとしない。
「彩里花?」
「あ、あのさっ」
眼を合わさないようにして、彩里花が話を始めてくれた。
「もうさ、うちらって会って結構経つじゃんか」
「十ヶ月くらい……か。まだ一年は経ってないよね」
「うんうん。それで、その間にいろいろあったと思うんだけど、晃志はどう思う?」
「いろいろか……あったな。二回くらい死にかけたけどね、僕も彩里花も」
本当に死にかけたのだが、今では良い思い出になってしまっている。記憶というのは恐ろしく楽天的だ。
「うん。そ、それで、もうあたしたち結構長く一緒にいるじゃんか」
「それさっきも同じようなことを言ったけど?」
「っるさいな。細かいことはいいんだよ。さっきも言ったなら、それだけ大事ってこと。黙ってきいて」
「…………」
「相づちくらいはして」
「わ、わかったよ」
細かいのはどっちだ、と言いたくなるが今のは僕が悪かったと思うので黙っておこう。
「それでね、あたし前からその……か、考えてたことがあって、さ」
僕と眼を合わせないながらも、彩里花は時折ちらちらと僕の顔を見る。
僕はなぜかそんな態度の彩里花に戸惑ってしまう。
「お、おう」
「そ、それは聞いて欲しいんだ」
彩里花は緊張しているらしく、言葉がどこかたどたどしい。そしてその緊張は僕にあっという間に感染する。
なんだこれは。
「わ、わかった、ちゃんと聞くよ」
「うん。だから、あたしと晃志もその……だいぶ長く一緒にいるようになっただろう。だからその……」
ここからがおそらく本題、というところで彩里花は押し黙ってしまった。
表情から何かを察しようにも、俯いてしまっているためにわからない。
一体、何が起こっているのか。
でも、ここはジッと待つのが礼儀のような気がして、僕は待つことにした。
するとしばらくして。
「だ、だからそのあたしはその、つまり、その、晃志のことが――」
「……うん、わかったけど、良く聞き取れなかった。ごめん。もう一回言ってもらっていいかな?」
すごく大事なことを言っていることはわかる。だからこそ、憶測で返事はしたくなかった。
「なっ……わ、わかったよ。いいか、だからあたしは晃志のことがす――」
今度は言葉をぶった切るように、僕の携帯が鳴った。大事な話の途中だ、電話の相手には悪いが保留してしまおうと思ったが、そうもできない相手だった。
「警部だ」
「え?」
会話の途中だったこともあり、彩里花に確認する。
「出てもいい?」
「当たり前でしょ。早く出て」
「わかった」
電話に出るなり、警部は少し慌てたように会話を始めた。
『檻枷(おりかせ)か。わたしだ。やられたよ。ノーマークだ。最悪な状況だ』
「何があったんですか?」
彩里花も聞き耳を立てる中、警部は話を続ける。
『噛み傷があるところから見て間違いない。被害者も危険な状態なんだ。すまないがすぐに来てくれないか。すぐにでも厳戒態勢を敷きたいところだが大事にするのは本意じゃないからな。わたしも、キミも』
「助かります。すぐに行きますから」
行ってもいい? と彩里花に眼で問うと、彩里花は意味を理解してこくんと頷いてくれた。
警部から場所を聞くと、通話を終了させる。
「事件?」
「そうみたい。今夜は寝られないかも」
「大丈夫。一緒に行っていいんだよね?」
「お願いしたい。できれば今夜中に片付けたいし」
「わかった。けど、どうしてそんなに急ぐ?」
「彩里花から話の続きを聞かないと」
すると、なぜか彩里花は真っ赤になって頷いた。
「う、うん」
一体、何の話なのだろうか。
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