贄の檻

代永 並木

見知らぬ部屋と4人の少女

「うーん……えっ、ここは?」


目を覚まし見知らぬ天井を見て飛び起きる

周りを見渡すと3人の少女が座り込んでいた


「ようやく起きたか」


少女のひとりが気づき近づいてくる


「は、はい……って澪先輩?」


見覚えのある人だった

同じ学校の先輩だ


「おっもしかして同じ学校の後輩か?あぁそうだ私は小鳥遊澪だ。君は?」

「音無霧です。ここは一体?」

「何処かの学校のようだが……周りを調べて見たがどこの学校なのかは分からなかった」

「分かったことと言えば化け物が徘徊している事、その化け物はこちらを見ると襲ってくる事、外へ出る扉は施錠されているって事とここが三階である事だけですわ」


こちらの少女も見覚えがある


「生徒会長の鈴谷伊織先輩?」

「えぇ、その通りですわ」

「に、逃げないと……」

「逃げると言っても最短の扉は閉まってますわよ?それと貴女は自己紹介してみては?」

「え、あっ……わ、私は南高校の1年4組の柊愛華、ええっと皆さんと同じ学校です」


唯一知らないが正直この2人が有名過ぎるだけで関わってない人物を知らないのは普通だろう

学年は同じでもクラスが違えば知らなくても無理はない


「全員同じ学校の生徒なんですね偶然ですかね?」


偶然か必然か全員が同じ学校の出身だった


「偶然にしては出来過ぎだと思いますわ、まぁ今は答えの出ない思惑を考えるよりはここから化け物を避けて出る方法を考えるのが先ですわ」

「あの、化け物とは?」

「人型の化け物だ、遠目では人のように見えるが手が異常に長い……いやあれは爪か?足先まで届く長さで全身が黒っぽくて赤い亀裂のような模様が全身にあって何かの被り物をしてる」

「あぁあれは子供向け番組の主人公クマソロですわ」


澪先輩は驚いている

人気番組のクマソロ戦記、一匹の熊の壮大なストーリー


「あ、あれがか?」

「あの被り物がですわ、最も番組の方の色はあんなのでは無かったですが……それで口元以外はクマソロの人形の頭を深く被っていて伸びたクマソロの手が両手についててそこからさっき澪さんの言っていた爪が足元まで伸びてましたの」

「そ、その怪物を見たのは何処ですか?」


愛華が聞く

怪物については愛華も知らないようだ


「最後に見たのは2階だな、遠目だったが」

「出るには扉を壊してですかね?」


扉が閉まっているということを聞いて思い付いたのは扉の破壊だが澪先輩が首を振る


「いやかなり頑丈だったから無理だ」

「ろ、ろくに情報が無いので……情報を集めませんか?だ、脱出方も見つかるかもなので……」


愛華の言う通り情報を集めれば出口に関する物はあるかもしれない


「情報を集めると言ってもどこを探すか」

「この教室は調べ終えましたわ。3階の他の教室も、どういう訳かあの化け物は教室には入ってきませんので」


会議の結果移動することを決めて澪先輩が先頭で2階に降りることになった


「大丈夫だ」


目がいい澪先輩が廊下を確認して移動する


「……教室に逃げ込め!」


澪先輩が叫ぶ


「ッ!あれが……」

「2人ともこちらへ」

「ア……ミ……タ」


化け物が気付き移動する

地面が揺れたと思った瞬間数メートルを一瞬で詰めてきた

愛華の目の前まで来る

言っていた通りの見た目をしている

長い爪を振るうと直線上に数メートルの爪痕が現れる

怯える愛華を引っ張り教室に入る

澪先輩はひとり別の教室に避難した


「大丈夫ですか!」

「あぁ大丈夫だ」

「さっきより凶暴ですわね……」

「た、大変です。床が……」


愛華が指を差す

その場所を見ると抉れている

教室をしばらく見たあと化け物は去っていく

澪先輩と合流して2階へ進む

今度は接敵せずに済む

近くの教室について辺りを調べるが何も見つからない

時間をかけて化け物を避けながら一つ一つ調べる

遭遇しては攻撃される


「この攻撃なら見える」


澪先輩は高い身体能力で化け物の攻撃を避ける


「くっ……」

「愛華さん!」


愛華に化け物の攻撃がかすった

壁や床を抉りとる一撃だ


「やはり凶暴化してますわね……4人揃ったからなのかそれとも別の理由なのか……」

「わ、私は大丈夫ですから急ぎましょう」

「そうだな、時間をかけると凶暴化するという可能性もある。それに多分連続ではあの攻撃はできないみたいだ。私や伊織が襲われた時はあの斬撃?は飛ばしてこなかったしな」

「えぇ、そのおかげで命拾いしましたわ……先導を澪さん頼みますわよ」


2階から1階へ降りる

教室は無く職員室や保健室があるが鍵が閉まってる


「くっそ!」

「れ、連続で皆さんで叩きましょう。怪物が来る前に」

「蹴ります!」


4人で扉を蹴り壊す


「よし」


職員室には鍵が真ん中に置いてあった

鍵を入手する


「これは出入口の鍵?」


保健室も同じようにこじ開けて入る


「ニ……ナ……」

「て、手を」


咄嗟に保健室から伸びた愛華の手を掴み攻撃を躱す


「よ、良かった」

「ありがとね」

「保健室か……そうだ」


澪先輩が包帯を取り出して愛華の怪我をした部分に巻く


「これで少しはマシだろう」

「さて、出口の鍵を開けましょう」


先輩2人はモップを装備した

居なくなったのを確認して4人で走って向かう

早い澪先輩が鍵を使うと開く


「開いたぞ!」


伊織先輩と一緒に外に身を投げるように出る

澪先輩は扉ギリギリで待機している


「愛華さん早く!」

「オ……ダ……ハ……サ……イ」


私は振り向きながら手を伸ばす

ベチャ……


「えっ……」

「あ……と……少し……だった……のに……」


私の方に伸ばされた手は届かず空を切る

代わりに鮮血が私の手を染める

愛華の胸を貫くように化け物の爪が突き刺さっている

爪を引き抜くと同時に愛華は力なく倒れる

呆然としている私を引っ張り澪先輩が外に出ると扉が閉まる


「愛華さん……」

「すまない……」


意識が暗転する

私は目を覚ます

見知った天井、周りを見渡すと自分の部屋だった

悪夢だと思う事にしたが翌日澪先輩と伊織先輩に話を聞き夢ではないと確認する

そして柊愛華という人物はこの学校に居ないと言うことを聞く

元々居なかったのかそれとも消えたのか……その真実は誰にもわからない


そして私達は日常に戻る

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贄の檻 代永 並木 @yonanami

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