二十六話 昇格判断試験

二十六話 昇格判断試験



「では、これより昇格判断試験についての説明に入る。皆、心して聞くように!」


 翌日。ウルヴォグ騎士学園総勢六百人の生徒のうち、これから二年生に上がろうとしている生徒約二百人。ベルナード魔術学園からは約百五十人にも登る人数が、集められていた。


 話題は言うまでもなく昇格判断試験について。噂には聞いていたが、試験は明日から始まってしまうと言うのに説明は今日が初めて。十分な準備時間は与えてくれないらしい。


「まず前提として、お前達一年生が昇格できるかは全てこの試験にかかっている。当然内容は厳しいものではあるが、絶対に投げ出すな。その瞬間、留年か退学が決定するからな」


 ギュルグ先生の喝が入り混じる中、試験内容が説明されていく。


 手元に配られた紙を見ながら話を聞くに、どうやらその内容は普段の実技訓練を元に組まれているようだった。


一 本試験はチーム戦で行う。チーム人数は四人とし、その組み合わせは全て学園側の公正なくじ引きを元とする。また、本番欠場者が出た場合はその人員の補充を禁止するものとする。

二 本試験は実技訓練場で行う。四人のチーム同士で試合を行い、その過程、結果を総勢八人の教員が一人一人の行動を細かく審査して点数とする。

三 本試験は三日間にかけて行う。チームを決める際、そのチームが試験を開始する時間、日程、対戦相手四人の名前を知れるものとする。ただし公平性を保つため、前日のくじ引きで名前が呼ばれるのは翌日の参加者のみである。よって本日呼ばれなかったものの参加日程は二日目か三日目となる。また、それらの者は当日の試合以外の観戦も一切禁止する。

四 本試験の勝利条件は、試合相手全員の無力化、もしくは相手チームからの旗の奪還である。敗北チームになった瞬間昇格が取り消される節のものではないが、勝利チームには点数の加算が行われる。

五 本試験の結果を発表するのは試験最終日の翌日とする。その際の異議申し立ては一切認めない。


 これが、試験の全容であった。


 四対四のチーム戦。いつものチームより一人少ないことに加えて、何より重要なのはそのメンバーが全て学園側によるくじ引きで決められること。


 これはある意味強いチームと弱いチームが明確に生まれないかもしれないうえに、前日になってようやくチームを知って次の日には連携ができるようにしなければならない。やはり昇格を判断する試験とあって高難度だ。


「では、これよりくじ引きを行う。名を呼ばれた者は前へ」


 そう言ってギュルグ先生が手を突っ込んだのは、大きな白い箱。そこから紙を取り出し、生徒の名前を次々と呼び出していった。


 ウルヴォグ騎士学園の生徒約二百人と、ベルナード魔術学園の生徒約百五十人。それを三日で分けるのだから、今日呼ばれるのはおよそ百二十人前後。できればここで呼ばれることは避けたいけれど────


「第五チーム。アリシア•ウルヴォグ、レグルス•マテゴライト、ユイ•エルス……ユウナ•アルデバラン」


「っ!!」


 そんな僕の期待を打ち砕くかのように、早々に名前が呼ばれる。


 第五チーム。第一チームと第二チームで一つの試合が行われるわけだから、つまり僕は初日の第三試合。あまりに早すぎる。


 だが、呼ばれてしまったものは仕方ない。僕は周りからの視線を肌で受けつつ、ステージの上へ登った。


 僕と横に並んだのは、二人の女子と一人の男子。この三人が、僕のこれからを決めるチームメイトだ。


「よ、よろしく」


「あ゛ぁ? 話しかけてんじゃねえよ。……ったく、最悪のはずれくじ引いちまった」


「では、お前達はこの紙を持って退出を。チームミーティングは好きなところで行うといい」


「はぁ? チームミーティングなんて必要ないわよ!」


「ア、アリシアさん……やめましょうよ。み、みんなに見られてます。恥ずかしい、です……」



 この、チームメイト達と……

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