第3話 絶対に流行らせてやる!
『妻に迎えたいと考えたなら、しっかり相手の素性をくまなく調べろよ!! 特に隠される事もなかったせいか、貴族名簿調べたら一発で関係を推測出来た事だったぞ?! 国王となった父親の実家の分家に当たる、今は無い男爵家の家名を持つ娘とか、怪しすぎるだろうがッ!!』
…と実際に叫んでいたのは、帝国から派遣した監査官(高位貴族)達。彼らも頭が痛かっただろうね。まぁ、彼らは大馬鹿の件だけじゃなく、今の国王の事でも頭を抱えていたそうだけども。
正当な王家の血を引いた王太子がいたからこそ、保護者として国王(代理)の座についていられたというのに、それを理解していないバカは必要ないよ。実家に戻すことも考えたけど、大馬鹿のやらかしの後に、自分が新たに王妃を迎えて後継者を設ければ解決だ、と言わんばかりの対応をされてしまってはね…。一応、伯爵家出身だから王家の血は多少混じってあっても、正当な隣国の王家の血を継ぐ母上が存命で、その息子である僕がいるのだから、父である帝王がその主張を鼻で笑って僕に立太子するよう命じるのは当然の流れと言える。…母上がその対応の話を聞いてほほ笑みながら扇子をブチ折ったからでもあるだろうけど。息子も現実を見ない大馬鹿だったけれど、父親も同じ系統だったようだ。
僕が立太子した後は、隣国の実権は全て僕が握る事になるので、後々今の国王を処罰することは造作もない。速やかに隠居してもらい王族から除名した後、平民として追放するか、監禁からの病死かのどちらかになるかな。ああ、それとも例の実の娘と共に男爵家としてしばらく過ごさせてみてもいいかもしれない。監視はするし、ほぼ監禁扱いになるだろうけど、どうせすぐに暮らしは破たんするだろうから、丁度良い罰になるんじゃないかな。その暮らしから逃げ出す、あるいは問題を起こしたら病死してもらう。うん、それでいいか。
例の娘と言えば、立場的に何も知らない弱者で、大馬鹿に色々吹き込まれた結果で起きたことのようだ。起こした行動こそマナー違反だとか上の身分の者に対しての不敬などの問題があっても、恋した事自体は罪に問えないので、厳密に重い罰を与えることはない。せいぜいが生涯王都に立入禁止令と、その王都から遠くにある田舎の領地で軟禁するくらい。子供が出来ていたら処刑の可能性はあったけど、その一線だけは超えていなかった事が幸いだった。
貴族にとっては致命的な罰だが他と比べれば命の危険はないのだから、甘い処置と思えるかもしれないけども、王妃を夢見ていたけれど成れず、王の娘であると知れても王族に成れず。更には問題を起こした側であるだけに、当然この先結婚は出来ないし、誰にも相手にされない暮らしが目に見えている。夢見る年頃の乙女には辛い暮らしになるだろうね。そして、そんな中で実の父親である元国王(代理)と暮らすなんてことになれば…不満はどこに、誰に向かうか。…考えるまでもないね。
ついでに調べた所、娘の母親は生きているそうだ。娼婦として働いていた際に身籠り、貴族の子なので産むだけ産んで国王の実家である伯爵家に引き渡し、その後他国の商家の後妻として身請けされて、今は幸せに暮らしている。こちらは無関係なので特に何かすることもない。
……気分転換になるかなと、大馬鹿達の末路とかに思考を巡らせてみたけれど、僕の気が晴れる事なんかない訳で。何なら山積みとなっているやるべき事が減るなんてこともなく。
あ~あ、本当に、大・迷・惑!!
そうだ…今度、この事例を小説家に書かせて、流行らせよう。二度とこんなバカを起こす奴が出ないようにね!
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