兄を支えようと思っていたのに、やらかした馬鹿のせいで隣国の王様やることになった僕の愚痴話

もふっとしたクリームパン

第1話 言わせてほしい。



――王族貴族が集まるきらびやかなパーティーの場で、とある国の王子様が一人の身分が低い女性を伴い、王子様と相思相愛となった愛する女をいじめて云々かんぬん、よって婚約者である悪女と婚約破棄し、悪女は罰としてこの国から追放する! なんて宣言し、周囲に主張が認められて、これで愛しい君と結婚出来るし、良き王様になればみんなが嬉しい! 愛は世界を救うんだ! これぞまさしくハッピーエンド!――



 …とまぁ、そんな劇的な迷場面(誤字ではない)があるストーリーの恋愛小説が庶民の間で人気だそうだ。実際にはもっと設定が盛り込まれてあり、色々恋愛的な試練があって、主人公である王子様とその愛する女性の二人はようやく結ばれました~的な話ではあるそうだが、一番の盛り上がりがその場面であるらしく……意外と中流貴族の女性達にも人気がある。正直言って、現実にはあり得ない話だからこそ人気なのだろうなと思っていた。つい三か月前までは。



 そう、現実ではありえない、そんなバカをやらかした、正真正銘の大馬鹿が現れたのだ。そいつは隣国の王太子だったが、血筋的に僕の従兄弟に当たるので、僕はものすごく頭が痛い。



 将来、父の跡を継いで皇帝になる兄を支えようと今まで頑張って来たのに、その大馬鹿のせいで、属国である隣国の王として僕が新たに立太子する事が決まった。…母の両親が隣国の前国王夫妻だものね。今の隣国の王は伯爵家の出であり婿養子の形で王族になった者で、母上の妹である王妃は大馬鹿を産んでから身体を壊し、流行り病で早くに亡くなってしまわれた。主家に当たる帝国の皇子で、正当な隣国の王家の血筋で、次男であった為に万が一のスペアとして帝王学などの王に必要な教育も仕込まれている僕。…選ばれない訳がなかったね。



 隣国では王族貴族の後継ぎとなる子供不足が相次いでおり、替えがいなかった王太子がバカをやらかした以上、一応隣国の王位継承権があり婚約者もまだ決まっていなかった僕以外に、都合よく王を継げる者がいなかったのもある。



 はっきり言おう、大・迷・惑だ!!!



 僕の兄は優秀でかっこよくて優しくて、次期皇帝としてこれ以上ないほど相応しいのだ。武にも優れているし、魔法だって光と闇の属性が得意で、まさに皇帝になるべくして生まれた人なのだ!……身内贔屓? それがどうした、僕がブラコンである自覚はとっくにあるさ。だからこそ、そんな尊敬する兄の近くでその治世を支えていたかったのに…。隣国とは言え、気楽に会えるような距離ではないし、立場としても家臣と属国の王とじゃ、精神的な距離さえ違う。僕の得意な闇魔法だけじゃ、長距離移動魔法または瞬間移動魔法は出来ないしね…ちくしょう。



 いくら愚痴をこぼした所で、現皇帝である父の命は絶対だ。それに隣国の民を心配している兄からも頼まれてしまったので、急いで隣国に向かい、立太子の準備を整えなければならなくなった。何でも大馬鹿が大々的に行動していたせいで、混乱の収拾が中々つかず、民にまで不安が広がっているそうなのだ。ああもう、今からやることがありすぎて、本当に頭が痛い。


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