サバの味噌煮。



「にゃぅんっ♪︎」


「あ、フリルちゃん! げんきになったの!?」


「よかったねぇ〜!」


 フリルとイチャイチャしながら休んだ翌日。

 

 もはや爽やかな「ちちち」って鳥の鳴き声すら怖過ぎる世の中で朝チュンを聞きながらもテントから出て、もう勝手に仕事の割り振りとかローテーションを決めて動き回ってる仲間たちに挨拶をした。


「みんな、おはよう。昨日はあれからどうした?」


「チカさんとミケさんに護衛をお願いしまして、二組に別れて魔石狩りと物資漁りでしたよ」


「ほうほう。やっぱミケちゃんもチカちゃんも頼りになるなぁ」


 教えてくれたタクマに礼を言って、俺はネコ専用機に移動する。皆が朝食とかで消費しただろう複製品を補充しつつ、自分の飯を確保するのだ。


 積んである品に手を突っ込んでイミテーターを使いながら、適当な人用缶詰を一つと猫缶を一つ引っ張り出す。ふむ、サバの味噌煮か。フリルと一緒に魚で朝食ってのもオツだな。あとはアルファ米と、カップ味噌汁で良いか。


「皆はもう飯食ったの?」


「はい。今日も探索しますからね! 早めに動きます!」


「そっかそっか。頑張ってねぇ」


 アキナに聞いたら全員もう飯食ったと言うので、俺は自分とフリルの飯だけ用意する。


「温める?」


「にゃぁ」


「わかった」


 猫缶温めるか聞いたら要らないって言われたので、フリル用のオシャレな器にまずドライフードを盛り付け、その上に猫缶をカシュッと開けて上に盛る。ドライフードとウェットフードの盛り合わせだ。朝から豪勢だぜ。


 次に俺の分を用意する。ガス式と薪用どっちも用意してあるキャンプコンロに野営鍋クッカーを置いて、アクアロードでクッカーに水を入れて、火にかける。

 

 今日の料理……、料理? 料理で良いか。料理にはガス式のキャンプコンロを使ってる。

 

 多分薪用コンロは山で暮らし始めたら使うんじゃないか? ガス缶複製出来るからずっとガスでも良いんだけど。


 さて、お湯が湧いたらアルファ米を適量、別のパックに移し替えてからお湯を注ぐ。これで数分待てばホカホカご飯になる。そしてカップ味噌汁にもお湯を注ぐ。お手軽だなぁ。


 クッカーにはまだお湯が残ってて、それをアルファ米を戻してる間に缶詰の湯煎もする。クッカーにサバの味噌煮缶を入れて、とろ火でじわじわと加熱する。


「にゃぁ?」


「ああ、もう出来るから」


 ご飯がホカホカに準備出来たら使い捨ての器に盛り付けて、そして温めたサバ缶もご飯の上にブチまける。汚いが、これが美味いのだ。


 缶詰の中に凝縮された魚の旨み、脂、味噌が渾然一体となった煮汁に汚染されたホカホカご飯は、罪の味なのだ。それを味噌煮されたサバと一緒に頬張るのは、もう犯しても無い罪を自白してしまう時間なのだ。


「よし、食べようか」


「にゃぁ〜!」


 俺の食事が用意出来るまで待っててくれたフリルは、俺と一緒に「いただきます」で食べ始める。ウチの子はなんてお行儀が良いんだろうか…………。


 ああ、世界に自慢したい。俺のフリルが無限に可愛い。


 カツカツとご飯を食べる愛らしいフリルを見守りながら、俺も自分の飯を食べる。ああ、サバの味噌煮オン・ザ・ライスはやはり罪の味だ。


 手を抜きたい日の飯はこれに限るぜってくらいよくやってた。ご飯炊いたらコンビニで缶詰買うだけで良いからな。


 缶詰のランクで味わいが変わってしまうが、お高い缶詰だったら大体間違いない。ホロホロに柔らかく煮込まれたサバを煮汁まみれのご飯と一緒に食べるのは、控えめに言って最高だ。無限に食えるぜ。


 俺がガツガツ、そしてフリルがカツカツと食事してると、ルリとアキナがニコニコしながらこっちを見てた。こっち、って言うか主にフリルを。


「……どうよ。ウチの最強はとてもプリチーであらせられるだろ?」


「そうですねっ!」


「ほんと、かぁいい……」


 どうやら、ウチのメンバーは猫が好きらしい。特に女子。


「で、何か用?」


「あ、そうでした……! えっと、あの、装備品をお借りしたくて……」


 流石に理由もなく、「早くから探索に行く」って言ってた女子が猫をひたすら眺めて無いだろうと思って聞いたら、たしかに大事な要件だった。


「そうだな。八九式は人数分出しとくか。あと蛮刀も」


 マントとかの防具に関してはケイコに頼んでくれと言って、俺はサクッと飯を食い終わって装備の用意をした。


 複製用で使用を厳禁してる八九式をイミテーターでコピーして、同じく複製用に置いてあるオリジナルの蛮刀もコピーする。蛮刀は二本買ったからな。俺が装備してるやつも置いてるコレも、どっちもオリジナルだ。


 ライフルは流石に壊れたら困るから、オリジナル品はなるべく触らないで複製品だけ使ってる。オリジナルさえ壊れなければいくらでも増やせるからな。


 弾倉マガジンや弾薬みたいにオリジナルの数がある物は、俺が携行して戦闘中にコピーして使う用と、八九式みたいに壊さない様に保管してる物がある。この辺の管理は生命線なのでキッチリやってる。


 マガジンは弾薬を入れっぱなしにするとバネが傷んで壊れると聞いたので、保管してる物は弾を抜いてる。


「よし、コレでいいか?」


「ありがとうございます! 探索頑張りますね!」


 弾薬とマガジンはリスク分散の為にネコ専用機とハイエースどっちにも積んであるけど、ライフルはハイエースに積んであるからハイエースで作業した。


 今いるパーティ全員が武装出来る数だけライフルを複製し、マガジンと弾薬もそれぞれ増やしてアキナ達に渡す。コピーの方なら好きなだけ使ってくれ。


「ああ、頑張ってくれ。…………それと、出来ればチビ達が無茶しないように見ててくれ」


「任せてください!」


 蛮刀なんかも同じように用意して、俺は二人を見送った。


「…………さぁて、俺も動くかねぇ」


「にゃぁ〜」


 今日からしばらく、鴨川での狩り暮しがはじまる。


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