双子の姉弟を保護します

「なるほどね……。 あのアレックス帝国のギルドから追放されたとはね。 それにしても双子かぁ」


 ケリンからの報告を聞いて、アルマは顔を歪めながらそう言った。

 だが、すぐに双子の話を聞いてすぐに表情が和らいだ。


「双子は能力が半分になるって言ってたが、本当なのか?」


「本当だよ。 でも、実戦経験や冒険者としての経験を積めばすぐに盛り返せるんだよ。 でも、アレックス帝国のギルドの大半は即戦力を求めているから、双子の子たちが冒険者のギルドに入らせてもらえないケースが多いんだよ」


 アルマが言うには、双子は最初は強さが半々にされるものの、実戦や冒険者としての経験を積めばすぐに挽回できるようだ。

 だが、どうも帝国のギルドの大半が即戦力を求めているらしく、双子がギルドに入ることはほぼないという。


「じゃあ、何でこの双子は一度ギルドに入れたんだ?」


「最近皇帝が変わったからね。 今の皇帝は弱い者でも冒険者に入りたいっていう人の為に、しっかり育てるようにと連盟を通じてギルドに伝えられているんだよ」


「そうなのか?」


「うん。 でも、さっきの話を聞くと皇帝のいう事を聞かないようにしているっぽいね。 あそこは皇帝のいう事は絶対だけど、即戦力主義のギルドは反逆の意志を示しているみたいだね」


「ややこしいなぁ」


 それでも、即戦力だけを求める事を是とする古いしきたりにこだわるあまり、皇帝に反する意思を向けているギルドも少なくないようだ。


「お待たせしました。 あ、アルマさんもご一緒でしたか」


「うん、報告があったからね」


「そうなんですね。 それでこの子たちが……」


「ああ、アレックス帝国のギルドから追放されてここに流れ着いた双子の剣士ですよ」


 話の途中で、連盟のスタッフがケリン達の元にやって来た。

 そして、ケリンがスタッフにも双子の詳しい事情を話した。

 一方で、双子は後から出て来たエクレアが面倒を見ているようだ。


「なるほど……、数週間前に追放されたと……。 双子だから強さが半減しているからと……」


「向こうの連盟は知っているのか、一応確認してくれますか?」


「分かりました。まず連絡を入れてみますね」


 そう言いながらスタッフは、ひとまず連盟支部の中に入っていく。

 帝国支部に連絡をするつもりだろう。


「それで、どうしましょうか、この子たち……」


「そうだね……、連絡が終わって確認したらうちで預かろうと思うんだ」


「保護……という形でか?」


「そうだね。 エリクシア王国は論外だけど、本来の冒険者連盟加盟国は追放や脱退などでギルドを除名した場合は連盟にも知らせなければいけないからね。 ケリン君がお願いしたようにその件を確認でき次第、正式にこっちで頑張ってもらおうって思ってるよ」


「それがいいかも知れないですね。 リト君……でしたっけ。 あの子ショックで喋れないみたいですし」


 連盟同士の連絡が確認でき次第、ひとまず保護と言う形でスタッフに伝えようと考えていた。

 リトという双子の片割れの少年が、道中のショックで喋れなくなったようなので、できるだけ安心感を与えてあげたいのが本音だろう。


「お待たせしました。 連絡を取り終えました」


 そこに帝国支部と連絡を終えたスタッフが再びこっちに来た。

 その表情はあまりいい感じではないようだ。


「どうでした?」


「それが、どうも追放によるギルド除名の報告がなかったようで、今回の追放の件もさっき初めて知ったようでした」


「ああ、やっぱりあの双子が入ったギルドは即戦力至上主義だから、弱い双子を追放し、現皇帝の同じ考えの連盟には連絡しなかったんだね。 現皇帝が知ったらかなりやばいかもね」


「ええ……。 あと、それを知った向こうのスタッフが皇帝に報告をするみたいですね」


 どうも帝国支部の連盟スタッフは、今回の追放の件を今まで知らなかったようだ。

 これによって、双子が入ったギルドは即戦力を是とする思想のギルドであり、現皇帝や連盟に反逆する気満々の様子だった事が判明したようだった。


「なるほどねぇ。 じゃあ、ひとまずこの子たちはボク達のギルドで保護するよ」


「その方がいいでしょう。 一応、脱退の手続きはするみたいですが、連盟としては今回の帝国のギルドの行動には徹底的に罰を与えてやりたいですね」


 脱退手続きはしているものの、リトや双子の片割れの少女は連盟からは在籍扱いのままなので、それが解消するまでは暫く保護するという形をとった。

 今は亡きエリクシア王国は、連盟に加入していなかったのでケリンが追放されてもすぐに新しいギルドに入ったが、今回は加盟国なので除籍手続きが終わらない限り。他のギルドに移籍できないルールとなっているようだが、保護なら問題はないらしい。


「それじゃ、行こうかリト君と……」


「あ、すみません。 私はリリです」


「リリちゃんだね。 それじゃボクのギルドで保護するから、一緒に来てね」


「分かりました。 リト行くよ」


 双子の少女リリの声掛けにリトは頷き、その足でギルド『スカーレット』へと向かった。

 なお、リリはケリンを信頼しているのか、ちゃっかりケリンの手を繋いでおり、アルマやエクレアはあらあらと言う様子だった。

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