幕間~ギルドのハーレム事情~

 リーベル公国領・アルストの町。

 境界線付近に存在しながらも、城下町に次ぐ二番目に大きい町に構えるギルド『スカーレット』。

 このギルドはAランクのギルドで、孤児院も同時に運営している為に、冒険者の数も多い。

 さらに、ギルドスタッフや孤児院専属のスタッフも含めるとかなりの人数が『スカーレット』に所属している事になる。


 大多数が所属しているギルドである故なのか、マスターのアルマ・カトワールの意向なのかは分からないが、ギルドメンバーの恋愛は自由となっている。

 現にギルドマスターのアルマは、立ち上げ当時のリキュアとアイシアと共に、今は亡きエリクシアから来たケリンという剣士と婚約しているのだから。


 この国には『一夫多妻制度』が設けられているおかげで、アルマ達は安心かつ仲良くケリンと付き合えるのだ。

 だが、この制度を使っているのはケリンだけではない。


「おはようございます、アレンさん」


「アレーン、おっはよー」


「おお、エリューシアにレナ。 おはよう」


 ギルド『スカーレット』に属する戦士のアレン・バーディ。

 彼はこの制度を利用して、『白魔術師』のエリューシア・フレグランスと『荷物持ち』のレナ・ハーロックと付き合っているのだ。

 アレンは起こしに来た二人の女性を抱きしめる。


「そういや、ケリンは?」


「アイシアさんと一緒に依頼をこなしてたよ。 帰りに楽しそうにブラックボアを狩りまくってたのを見たから」


「おおぅ……」


「そういえば、ケリンさんもあの制度を使ってマスターであるアルマさんとリキュアさんとアイシアさんと付き合う決意をしたんですよね」


「聞いた話じゃな。 行使したのはマスターのアルマらしいが」


「何だかんだで、アルマさんも春が来たよね。 ギルマスという役職という枷があるのをずっと心配してたから」


 食堂に向かう最中に、アレンがケリンはどうしたのかと聞くと、レナが帰りにアイシアとブラックボアを楽しそうに狩っている様子を見たという。

 それを聞いたアレンは、やや引き気味のリアクションをしたがすぐに立て直す。

 そこにエリューシアが、『一夫多妻制度』でケリンがアイシアとアルマ、そしてリキュアと付き合い始めたという話に持っていった。


「何だかんだでここは恋愛は自由だしな。 俺やケリンだけじゃなく、他の奴もある意味ハーレムを築いているしなぁ」


「オレギ君とマヤノさんとルーデシアさん、そして孤児院スタッフのファニカさんもそうですね」


「後は、シルス君はエクレアさんと孤児院スタッフのエルさんと付き合ってるしね」


 ケリンやアレンだけでなく、オレギという男性とシルスも同様に『一夫多妻制度』を利用して複数の女性と付き合っているようだ。

 リーベル公国側が『一夫多妻制度』を公に施行しているおかげで、安心できるというのだろう。

 一部の国はそれを施行していないようで、そこでは婚約破棄やら浮気やらで大騒ぎしているのだとか。


「あ、アレン先輩」


「おお、オレギにマヤノ。 お前さん達も今から飯か?」


「うん……。 依頼を終えたばかりで……お腹ペコペコ」


「ルーデシアさんは?」


「先に……トイレに」


 食堂の目の前で、オレギとマヤノと言う女性に出会う。

 彼らも依頼から帰って来たばかりで、これから食事の予定だそうだ。

 ルーデシアという女性は帰宅後、先にトイレに向かったようだ。


「はー、危なかったぁ。 あ、アレンさんにレナさんにエリューシアさん」


「お帰りなさい。 相当切羽詰まってたのね」


「まぁね。 行けると思って油断したよ」


 トイレから戻って来たルーデシアはレナと話をした。

 どうも二人は同期のようだが。


「あれれ? 二組のハーレムグループが食堂の前でどうしたの?」


「「「マスター」」」


 そこにアルマも食堂に来たようだ。

 隣にはリキュアもいる。


「いやー、俺達はこれから食事を」


「なるほどね。 こっちもそろそろケリン君とアイシアが戻ってくるし、食事の準備をしようとしててね」


「この際ですし、皆さんも食事を作られては? 私とファニカさんが指導しますよ」


「うぐぅっ!?」


「ファニカ……、いつの間に……そっち側に……」


「何だ何だ? この騒ぎは」


 アルマとリキュアは、もうすぐ帰宅するケリンとアイシアの為に食事の準備をしようとしたようだが、リキュアは丁度いいという感じで、アレン達にも料理してはと言った。

 その瞬間、マヤノやルーデシア、エリューシアは顔を青さめた。

 そこにケリンやアイシアも帰ってきた。


「あ、ケリン君にアイシア、お帰り」


「丁度食事の準備をしようと思ってたんですよ。 ついでに二組のハーレムグループにも料理をさせようと。 料理の苦手な女子がいるので」


「ああ、そういう事か。 料理は俺も手伝うし、リキュアは苦手女子に指導してみたらどうだ?」


「ちょっ、け、ケリンさーん!!?」


「ケリン君のお墨付きが貰えたね。 ボクも料理をしてるんだし、頑張って覚えるようにね。 好きな人の為にも」


「ううぅ……」


 アルマにも促されてどんよりした様子でリキュアに連れられて三人の女子は台所へと続く部屋に入っていく。


「アレン?」


「ケリン、お前のハーレムは料理が出来て羨ましいな」


「そうか? とにかく俺もアルマを手伝いに行くよ」


「ああ。 俺たちも行くか、レナ」


「そうだね。 これで、私の負担が和らげればいいんだけど」


 ケリンのハーレムグループは料理が出来る女子ばかりで羨ましいと嘆くアレン。

 素知らぬ顔でアルマ達の手伝いをすると言うケリンの後をアレンとレナはついていく事にした。


 他にもハーレムグループを形成している者はいると思うが、主なグループはこの三組。

 これがギルド『スカーレット』のハーレム事情である。


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