余命4ヶ月の先生と不真面目生徒の話

@Hina_1525

第1話

余命4ヶ月の先生と不真面目生徒の話

小学6年生の始業式にK先生を初めて見た。

K先生の第一印象は花みたいな人だなって思った

私が1組で、K先生のクラスが2組。

クラスは違うけど、書写と音楽、図工の授業は

K先生が授業することになった。


私は勉強が嫌いで、クラスの3人にいじめられてたから、殆どの教科寝てるか授業を抜け出して保健室で寝てるかだった。

だけど、K先生が授業をする時間だけは

教室でおとなしく授業を聞いてた。

なんでかはわからないけど。


5月のある日学校に行ったら、いじめっ子3人組に駐輪場に呼び出された。

いつもみたいに、顔とかお腹を殴られた。

いつもなら我慢できたけど、その時は我慢できなかった。やられたままで悔しかったんだと思う。


私は、その3人を思いっきり殴った。

気づいたら、1人は鼻血を出してて、1人は腕を抑えて蹲ってて、もう1人は腰を抜かしてた。

そのあと3人は早退した。

罪悪感なんてなかった。当然の報いだ。


その日の2時間目は音楽、K先生の授業だ。

いつもは受けてたけど、気が乗らなくて保健室で

「授業なんてめんどくせぇ、まじだりぃ。」

って言いながらベットにダイブした。

そしたら、K先生が来た。

どうせ怒られるんだろうと思った。

だけどK先生は

「気づいてあげれなくてごめんね」

って言って泣いてた。

きっと私の服についてたいじめっ子の血と破れた洋服を見て察したんだと思う。

そして今までのことをK先生に全て打ち明けた。

その日は放課後もK先生といろいろ話した。

勉強ができないこととか、家に居たくないこととか、全部話した。K先生は、黙って聴いててくれた。話終わったあと、K先生は、私に

「これから何かあったら先生のとこおいで、

そして時間がある日放課後1時間くらいなら勉強教えてあげられるから一緒に勉強しよう」

って言ってくれた。

その日から、どの教科も真面目に取り組むようになった。そして卒業する日までずっとK先生と放課後勉強する生活を続けた。


卒業の日 3月19日

K先生は私に手紙と連絡先を書いた紙をくれた。

手紙には

1年間よくがんばったね。偉かったです。

中学校は、勉強も大変になるし、時間もなくなるし大変だと思うけど私はいつでも応援してるからね。何かあったら連絡してね。待ってるよ!

って綺麗な字で書いてあった。


私はK先生に、

「今までありがとう、中学校行っても頑張る

テストでいい点とって先生に見せてあげるわ、

楽しみにしといてな!」って言って小学校を出た


そこから中学校に入学して2年半がたった3年生の10月、K先生から電話がきた。

「話したいことがあるから時間がある時ここに来て、忙しかったら無理しなくていいよ」

私はK先生に「今すぐいく!」って返事をして

後で送られてきた住所に向かった。


そこは病院だった。

2年半ぶりに見たK先生は痩せてて、酸素マスクがつけられてた。いっぱい管が繋がってて、その人がK先生だとは思えなかった。

「久しぶりだね、元気してた?

 ごめんね、忙しいのに呼び出しちゃって。」

「元気だけど先生なにがあったの病気?」

「まぁ見ての通り病気になっちゃって…」

「先生の病気って治るんだよね」

「…難しいって。たぶんもう治らんと思う。

 お医者さんには余命4ヶ月って言われちゃった よ。まさか35歳なのに余命宣告されるなんて」

「…」

「大丈夫。私はすぐ死ぬつもりはないよ。

 それにもう外は暗いから今日はもう帰りな。

 元気な顔が見れてよかったよ」

「わかった。これから行ける時は絶対来るから」

「待ってるね、暗いから気をつけてね」

「先生、死なないでな。」

って言って先生の病室を出た瞬間、

一気に涙が溢れてきて泣いた。

だってあんなに元気だった先生が

死ぬかもしれないんだもん、そりゃ泣くわ。

落ち着いたら家に帰った。

親には怒られた。

「中学生がこんな時間までなにしてんだ!」

無視して部屋に閉じこもった。


もうすぐ受験なのに。

合格して先生を喜ばしたかったのに。

先生が死んじゃったら意味ないよ。


あれから一週間、久しぶりに外に出た。

もちろん今から行くのは先生のとこ。

お見舞いになに買おうかな。

まずはお花でしょ、あとたい焼きだな。

先生たい焼き好きだし、病室でも食べてたもんな

ここから近いし、たい焼きから買うか。

「たい焼き一つ。」

「かしこまりました。」

「200円です」

高いなぁ、まあいっか。

「ありがとうございましたー!」

次はお花屋さんか。なに買おうかな。

「いらっしゃいませー!」

「お見舞いの花を探してるんですが」

「ではこちらはいかがですか?」

ひまわりかぁ。先生好きそうだしいっか。

「じゃあ、それにします。」

「5000円になります」

高い!けどまぁいい払おう。

「ありがとうございました〜」

先生の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

一人で不気味に笑いながら歩く。

変人だ。


病院に着いた。

先生の病室は…あぁここか。急ごう。

一応ノックする。先生じゃなかったら気まずい。

「はい、どうぞー」

よし、先生の声だ。

「先生、お見舞い来たよ!花も買ってきた!

 あ、後たい焼きも!先生好きでしょ!」

「ありがとう!お花綺麗だね〜

 たい焼きもありがとうね〜

 よしっ、一緒に食べようか!美味しそう」

「先生ごめん、一つしか買ってねーや。

 先生食っていいよー」

「そうなの?じゃあ半分こね!」

「んー。わかったよ」

めっちゃうまい。なんかやけにこっち見てるな。

「口の周りついてるよ、取ってあげるおいで。」

(え、うそ。気をつけてたのに…はずっ)

「よし、取れた。口の周りにつけて食べるのは前と全然変わらないなぁ。」

恥ずかしいじゃねぇか、ちくしょう。

「っ…」

「ねぇそういえばもうすぐ受験でしょ?

 行く高校とか決まってる?」

「ここの近くの高校にするよ」

「そっか〜、あ、そうだ今から時間空いてる?」

「うん、まぁ空いてるけど、なんで?」

「ここの近くにね、神社があるんだけど

 一緒に行きたいなって」

「いいけど、入院中じゃん」

「大丈夫だよ、行こう、近いし」

「わかった、無理しないでね」

「はいはい、大丈夫よ」


結局タクシーで行った。

先生は高いし大丈夫って言ったけど

私がお金を出して半ば強引に乗せた。


in神社

神社にいる時はいろんな話をした。

小学校の時のこととか、

今のこととか。いろんなことを話した。

この時が一番幸せだった。

帰りももちろんタクシーで病院に帰った。


先生が生きてる間に病院の外に出れるのは

これが最後だった


暗くなったから、先生が病室についたら

「じゃーね、また来るから!」って言って

自宅に帰った。


それから週一回は必ず病室に通った。

たい焼きと、お花を持って。


先生はどんどん元気がなくなってた。


…まさか、ね。

だって先生だよ?

死ぬわけないじゃん。

大丈夫だよね。


先生は、余命4ヶ月って言われたのにも関わらず

3月2日もあいかわらずベットの上で美味しそうにたい焼きを頬張っている。


食べ終わった後、鉛筆をくれた。

「合格祈願の鉛筆。明日受験でしょ?

 こんな日くらい家で勉強してた方がいいんじゃ ない?」

見舞いに来た瞬間嬉しそうに振り返ってたくせに

今だってニヤついてる。まんざらでもないようだ

「あん?どーでもいいわ受験なんて。

 先生のといる方が大切に決まってんじゃん」

「女の子なんだからもうちょっとおしとやかに」

「はいはい。」

「でもありがとう、来てくれて嬉しいよ

 今日はもう帰りな、受験勉強しないとね。」

「わかったわかった。勉強するよ」

「気をつけてね」

「うん」

扉を閉めた瞬間、

「頑張れよー!!」

この先生は、さっき女の子なんだからとか

ほざいてたくせに。馬鹿でかい声で。

私はそんな先生にこう返す

「上等だー!!」

病院内でもお構いなし。

いっか。今日くらい。


3月3日 受験当日

先生がくれた合格祈願の鉛筆をお守りとして

持っていく。

テストは疲れた。長いし、意味不。

まぁそこそこできたんじゃない?

かーえろ。帰って自己採点だな。


自己採点、222点。

おー。ゾロ目。

狙ったわけじゃないんだけど

なんかこーいうのって嬉しい。

親より前に速攻先生にラインする。

自己採点222点だった。合格出来るかも。

送信。

「よかったじゃん!おめでとう!」

ボイスメッセージで返ってきた。

面白い先生だな。

自分も「ありがとうー、14日合格発表だから」

ボイスメッセージで返す。送信。

すぐに返信が来た。

「相変わらず声でかいなー、元気でるわ!」

馬鹿でかい声でボイスメッセージが来た。

こっちのセリフだっつーの。

「合否は一番に知らせるねー」送信。

「待ってるねー!」

…先生、声でかい。本当に病人か?

元気がないように見えたのは見間違いか?

まあいい。今日はもう寝るか。


3月14日合格発表の日。

確か、受験番号は…そうそう、これ。

緊張する。



「あった!合格だ!」

早速先生にライン。ボイスメッセージでね。

「先生!合格した!受かったぞ!

 先生のおかげだ!本当にありがとう!」送信

またすぐに返信が来た。

「今嬉しくて泣いてるので文で失礼。

 合格おめでとう!さすがだよ。

 高校生になるのこれから楽しみだね!」

あぁ、嬉しすぎる!先生んとこいこう。

「今から行くわ、待ってて!」送信。


ノックせずに乱暴にドアを開ける。

目が真っ赤になった先生とご対面。

二人で大泣きする。

先生は前みたいに頭を撫でて抱きしめてくれる。

「おめでとう。やれるって信じてたよ。」

「当たり前じゃん、落ちるわけないよ」

そこから1時間くらい思い出話をした。

外が暗くなってきたから帰る。

帰りたくないけど、しょうがないから帰る。

「気をつけてね!」

「はーい」

確か、4月7日が入学式だな。

準備いそがしくなるなぁ〜

まぁ病室にはしっかり通うけど。


入学式前日、病室に制服を着ていく。

先生とツーショット

幸せだ。


「明日は入学式だから早めに帰るね、

 たい焼きここ置いてくね。」

「ありがとう、入学式頑張れよー!」

「はーい」


4月7日入学式

どんな人が担任だろう

いい人がいいな。

担任のM先生がくる。

いい人そうだな。よっしゃあ。

顔には出さないけど。

あ、声にも出さないけどね。


入学式が終わって親と帰る。

「いい人そうだね、担任の先生」

「うん」

「これから頑張ってね」

「うん」

入学式の後も結構忙しかった。

だけど、割と順調に進んだ。


4月27日お見舞いに行く。

「先生、お見舞いきたよー!

 これ、たい焼きと、お花ね。」

「ありがとうー!よし、食べるか!」

「うん!」

「学校どう?楽しい?」

「まぁまぁかな。担任の先生はM先生っていって いい人そうだったし、結構嬉しい。」

「ははは、そっか。よかったじゃん」

「うん」

「あ!また口の周りつけて。おいで」

「う…」

あぁ、恥ずかしい。二回目だぞ、これ

「よし、取れた」

「…ありがと。」

「そうだ、将来の夢決まったよ!」

「え!なにになりたいの?」

「医者になりたい、先生を治すためにね!」

「そうなんだ、嬉しい!じゃあもっと勉強

 しないとね!」

「頑張る!」

「今日今から予定あるから帰るね、また来るわ」

「了解。気をつけてねー」

「はーい」

先生と話したのはこれが最後

この時は先生が亡くなることをまだ知らない


4月28日放課後

学校から家に帰ろうとしてた時、電話が鳴った

知らない番号。嫌な予感がする。

「〇〇さんのお電話で間違いないですか?」

「はい、そうですが、何か?」

「こちら△△病院のTと申します」

「はぁ。」

「先程、Kさんが亡くなりました。

 今から来ていただくのは可能でしょうか?」

「…すぐ、向かいますっ」

泣きながら走る

何回も転びそうになる

涙で前が見えない

でも走る

病院に着く

いつもの病室まで階段を使って上がる

病室に着く

誰かの泣き声がする

扉を開ける

先生がいる。

顔に白い布がかかってる

顔が見えない

先生のお母さん、友人らしき人。

知らない人が大勢集まっている

先生に近づく。

「先生、お見舞いに、きたよ。」

「…」

「ねぇ先生?」

先生の腕を握る。

いつもと違う

冷たい

ようやく理解した。先生は亡くなった

また涙が溢れる。

放心。

昨日までは、元気だったのに。


結局帰ったのは8時をまわってから。

親には今日帰りが遅くなるとは伝えた。


家に着いたら風呂も入らずにベットに行く

先生のことを思い出す。

もうこの世にはいない。

知ってるけど。

また泣く。

何回も泣く。

0時になる。

最悪のゴールデンウィークの幕開け。

ゴールデンウィークはボーっとしてた

ずーっと先生のことを考える


先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生先生


なんで?

なんで先生が?


こんな感じのゴールデンウィーク。

毎年出かけたりゲームしたりしてるのに

今年のゴールデンウィークは、

楽しくない。


あっという間にゴールデンウィークが終わる

勉強はもうやらない。

先生がいないから。

いつもみたいに褒めてくれないから

頭を撫でてくれないから。

やらない


「勉強記録0時間」

配られた学習記録表に書き込む。

次の日の朝、M先生と話をする。

「学習記録を見て心配になっちゃって…」

「…」

「今までたくさんやってたから

 きっと疲れちゃったんだよね」

「…」

なにも答えない。

この人にはわからない。

大好きな人を亡くした辛さ、絶対わからない。

先生が話してるのを聞いてる

頭には入らない

今はK先生のことで頭がいっぱい

「…」

先生が話し終わったとこで返事をする

「はい。」

話が終わった。聞いてるだけだったけど。

また1ヶ月後M先生と多目的室で話をした

そこで初めてK先生が亡くなったことを話した

M先生は真剣に聴いてくれた


M先生は、教え子を事故で亡くした話をしていた

この人にはわからないと思ってたのに

M先生はこういう経験したことないと思ってたのに、びっくりした。


先生はいろんなアドバイスをしてくれた

理解もしてくれた

この先生はいい先生だなって思った。

それに、K先生にも少し似てる。

M先生が担任で良かったな。


勉強頑張ろうかな。

こんなんじゃ、K先生はきっと褒めてくれない

頑張ろう。


その日から少しずつ勉強を始めた

まずは数学。


は?全然わからねぇ。ちっ。英語やるか

after?because?わからねぇ!ちっ。

次は国語。なんて読むん?この漢字。

あああああああああああああああああああ!

わからねぇぇぇぇぇぇぇぇ!

ノートが破ける。心が折れる。

だけど1時間やった。

学習記録に1時間っと。よし。やめだ、やめ!


こんな感じで少しずつ勉強時間を増やした。


月一回って決めてたけど我慢ができなくなった

6月10日、花とたい焼きを買ってK先生のお墓に行った。先生の墓の前で座る。

先生はいない。

しょうがないからたい焼きを1人で食べる。

お花を添える。

前に来た時は、仏花を添えた。

今日は違う。


持ってきた花は

ピンク、白、オレンジ、赤、青色の薔薇

それぞれの色の花言葉は

「感謝」「尊敬」「信頼」「情熱」「奇跡」

薔薇5本の花言葉は

「あなたと出会えて良かった」


この話は実話です。

著者は高校1年生。

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