(4)

 香典の筈が無かった。

 そもそも、この札束が入った封筒を置いていった相手が、光宙の父が半年ほど前に死んだ事を知っているかも怪しい。

 それでも、仏壇しか置くべき場所を思い付かなかった。

「社長さん。絶対に、おかしいですよ」

 ゴが、仏壇に置かれた封筒を虚ろな目で眺めている光宙に背後うしろから声をかけた。

「そ……そりゃ、おいも変じゃと思うとるけどね……」

「なら、このお金を返しましょうよ。絶対にトラブルに巻き込まれますよ」

「返した方がいいよかは判っとる」

「じゃあ、早く返しに行きましょうよ」

「でも、あのあん人の連絡先が判らん」

「えっ?」

「どうすりゃいいよかと思うね?」

「私にも判りませんよ。とりあえず、警察に行きましょう」

「い……いや……いくら考えても……犯罪になりそうなこつが何1つ無か……」

「じゃあ、どうするんですか?」

「……しばらく、留守にするけん」

「本気ですか?」

「……い……いや……その……」

「社長さん、気が弱すぎますよ」

「でも……」

「考え直して下さい」

「でも、考え直しても、その後、どうすればいいかどげんすりゃよかか、さっぱり判らん」

「社長さん、優柔不断すぎます。でも、社長さんが判断を間違うと、私達も酷い目に遭うから……」

「いや、判っとるけど……どうすりゃええと思う?」

「そこが優柔不断なんです」

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